トラキライト挿管 自分なりのコツ

(1)準備段階でのチェック事項
・ワンド内のワイヤーのすべり具合が良いこと→悪ければワイヤーにキシロカインスプレーしておく
・ワイヤー上端屈曲部がプラスチックの凹部にきちっとはまりこんでいること
・軽い力でワイヤーの引き抜きができること
・チューブ先端のベーベルが正確に患者左側を向くように、チューブがセットされていること
・点灯チェック→点灯しない場合は、接触点が錆びているか、断線したか。錆びただけなら、何回かワンドとトラキライト本体をスライドさせれば点灯するようになる。

(2)左手は開口させるというよりは、受け顎にして咽頭スペースを作る感じ。喉頭鏡で喉頭展開を行う場合には、最大開口位を目標に左手で下顎を引き上げた後、尾側に大きくときに力強く移動させているが、そんな必要はない。下顎挙上とわずかに開口させることができれば十分だと思う。

(3)頚部後屈は意図的に行わない。ラリンゲアル挿入時は、マスク先端部の反り返りを防ぐために Sniffing Position にして口腔軸と咽頭軸の成す角度を90度より大きくする必要があるが、トラキライトの場合には、むしろ90度のままの方がよいので、頚部の後屈はしない方がよいのだと思う。

(4)チューブの屈曲部よりも先端側が間違いなく正中を進んでいっていることを確認するための視野を確保するために、左手の下顎を持つ手は、正中よりも左側に位置させる。正中で開口させると自分の親指が邪魔になって、チューブ先端がどの方向に進んでいっているのかが分かりづらい。

(5)以上の要件を満たすには・・・、下顎だけを左手で持って、しっかり引き上げようとすると、必然的に頚部~頭部全体が下顎を中心にぶら下げられた状態になって、結果的に頭部が後屈する姿勢になってしまうので、左手の母指球を患者の頬に押し当て、中指~小指はちょうどマスク・ホールディングする時と同じように下顎枝~下顎角にあてて下顎を挙上することで、下顎内側に入れた母指の幅の分だけ、上顎歯列よりも下顎歯列が前方に位置するように保持することができる。

(6)トラキライト&チューブを右手で水平に保持し、患者の右側から、チューブの屈曲部よりも先端5cmを、口の正中を口咽頭に向かって差し入れる(この時、トラキライト本体は下を向いている。)。そして、トラキライトの長軸を水平位から垂直位にすると同時に、トラキライト本体を反時計軸方向に90度回転させながら(本体は患者の足側を向く)、そ~~~っと、チューブの先端5cmを口咽頭に「正中に、正中に・・・」と思いながら落とし込む。うまく行く場合は、これだけで入ってしまうこともある。軽く甲状軟骨に向かって蹴り上げる感じで進める、後退する、進める、後退するを繰り返す。

(7)変なところに光が出れば、チューブの進行方向が悪いので、そのまま細かく左右に振って軌道修正するのではなく、いったん大きく後退して、もう一度、確かに屈曲部よりも先端側が正中を進んでいることを確認しながら再トライすることも必要だと思う。硬麻や脊麻するときはそうしているでしょ!

(8)部屋の電気は、自信が付いてくるまでは、シャーカステン1つくらいの暗さでやった方がいい。トラキライトの先端が喉頭に入った時と、食道に入ったときの違いが明確に分かるようになるまでは、無理に明るい部屋でやることはない。喉頭鏡の初心者が、目で見て確認したから・・と聴診器を使わずにおくようなものかな・・・、基本は基本。

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