PONV 予防のデキサメタゾン:無作為対照試験のメタ分析最新版
Dexamethasone to Prevent Postoperative Nausea and Vomiting: An Updated Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Anesthesia & Analgesia vol. 116 no. 1 58-74
・デキサメタゾンの術後悪心嘔吐(PONV)減少作用は、確立されているが、それが単独で、あるいは他剤併用の予防戦略として使用される場合、PONV を減少させるための最適なデキサメタゾン用量は、明らかにはされていない。本研究では、PONV 予防に、単剤、あるいは併用予防治療の一環として使用した場合、デキサメタゾン 4mg-5mg と 8mg-10mg 静注用量の使用を評価した。
・広範な検索を実施して、術後の嘔気・嘔吐を軽減するために予防薬としてデキサメタゾンの全身投与を評価した無作為臨床試験を同定した。デキサメタゾン用量の効果は、研究を 2 群にプールすることにより評価された::4mg-5mg、8mg-10mg。最初の群は、外来麻酔学会(SAMBA)ガイドラインによって示されたデキサメタゾンの PONV 予防用量を代表し、第 2 群は、ガイドライン推奨用量の 2 倍を表わしている。SAMBA ガイドラインは研究を踏まえて作成されており、それら研究では、デキサメタゾンの異なる用量を調査するために実施された。
・6696 人の被験者を伴う 60 編の無作為臨床試験を含めた。デキサメタゾン 4-5mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV が少なく、オッズ比(OR 0.31; 95%信頼区間[CI]、0.23-0.41)治療効果発現必要症例数(NNT、3.7; 95%CI、3.0-4.7)が低かった。別の制吐剤と併用投与した場合にも、デキサメタゾン 4-5mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV は少なかった(OR 0.50; 95%CI、0.35-0.72; NNT、6.6; 95%CI、4.3-12.8)。デキサメタゾン 8-10mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV は少なかった(OR 0.26; 95% CI、0.20-0.32; NNT、3.8; 95% CI、3.0-4.3)。8-10mg 用量分析では、Funnel plot に非対称性が見られたことから出版バイアスの可能性が示唆された。8-10mg 用量群は、別の制吐薬と併用された場合にも、24 時間 PONV 発生率は減少した(OR 0.35; 95% CI、0.22-0.53; NNT、6.2; 95% CI、4.5-10)。群間で直接比較した研究では、8mg-10mg 用量群は、4mg-5mg 用量群に比較して、術後の嘔気・嘔吐の発生率に及ぼす臨床上の利点はなかった。
・今回の結果から、デキサメタゾンを単剤で、あるいは他剤との併用療法で使用した場合に、4-5mg 用量は、PONV 減少において 8-10mg 用量と同様の臨床効果を有するように思われることが示された。これらの知見は、PONV に対する SAMBA ガイドラインの現行の推奨事項(デキサメタゾンの全身投与用量として 4mg-5mg を好ましいとしている)を支持するものである。
[!]:何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし。」ということわざ通りかもしれない。もう 20 年近くも前だが、気管挿管に難渋して、だいぶ喉頭をつついたので、術後の喉頭浮腫予防にデキサメタゾン 8mg 投与しようとしたら、耳鼻科の老練医師が「そんな量投与したら夜眠れなくなるから、もう少し少なくしてください。」と言われたことがある。
<関連文献>
1.デキサメタゾンは術後悪心嘔吐を予防する:有効性 vs リスク
2.悪心予防のデキサメタゾンの使用と婦人科尿路系手術後の感染症
3.小児入院患者で扁桃摘出術後の嘔吐予防にデキサメタゾンとメチルプレドニゾロンの比較:無作為試験
4.鼻中隔形成術の麻酔導入時に術後の PONV と疼痛を軽減するために静脈内ステロイドを使用
5.デキサメタゾンと併用したメトクロプラミドによる術後悪心嘔吐の予防:無作為二重盲検多施設試験
6.腹腔鏡下胆嚢摘出術を受ける患者でエフェドリン+デキサメタゾンは術後悪心嘔吐を減少させる
Anesthesia & Analgesia vol. 116 no. 1 58-74

・広範な検索を実施して、術後の嘔気・嘔吐を軽減するために予防薬としてデキサメタゾンの全身投与を評価した無作為臨床試験を同定した。デキサメタゾン用量の効果は、研究を 2 群にプールすることにより評価された::4mg-5mg、8mg-10mg。最初の群は、外来麻酔学会(SAMBA)ガイドラインによって示されたデキサメタゾンの PONV 予防用量を代表し、第 2 群は、ガイドライン推奨用量の 2 倍を表わしている。SAMBA ガイドラインは研究を踏まえて作成されており、それら研究では、デキサメタゾンの異なる用量を調査するために実施された。
・6696 人の被験者を伴う 60 編の無作為臨床試験を含めた。デキサメタゾン 4-5mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV が少なく、オッズ比(OR 0.31; 95%信頼区間[CI]、0.23-0.41)治療効果発現必要症例数(NNT、3.7; 95%CI、3.0-4.7)が低かった。別の制吐剤と併用投与した場合にも、デキサメタゾン 4-5mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV は少なかった(OR 0.50; 95%CI、0.35-0.72; NNT、6.6; 95%CI、4.3-12.8)。デキサメタゾン 8-10mg 用量群は、対照と比較して 24 時間 PONV は少なかった(OR 0.26; 95% CI、0.20-0.32; NNT、3.8; 95% CI、3.0-4.3)。8-10mg 用量分析では、Funnel plot に非対称性が見られたことから出版バイアスの可能性が示唆された。8-10mg 用量群は、別の制吐薬と併用された場合にも、24 時間 PONV 発生率は減少した(OR 0.35; 95% CI、0.22-0.53; NNT、6.2; 95% CI、4.5-10)。群間で直接比較した研究では、8mg-10mg 用量群は、4mg-5mg 用量群に比較して、術後の嘔気・嘔吐の発生率に及ぼす臨床上の利点はなかった。
・今回の結果から、デキサメタゾンを単剤で、あるいは他剤との併用療法で使用した場合に、4-5mg 用量は、PONV 減少において 8-10mg 用量と同様の臨床効果を有するように思われることが示された。これらの知見は、PONV に対する SAMBA ガイドラインの現行の推奨事項(デキサメタゾンの全身投与用量として 4mg-5mg を好ましいとしている)を支持するものである。
[!]:何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし。」ということわざ通りかもしれない。もう 20 年近くも前だが、気管挿管に難渋して、だいぶ喉頭をつついたので、術後の喉頭浮腫予防にデキサメタゾン 8mg 投与しようとしたら、耳鼻科の老練医師が「そんな量投与したら夜眠れなくなるから、もう少し少なくしてください。」と言われたことがある。
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1.デキサメタゾンは術後悪心嘔吐を予防する:有効性 vs リスク
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