麻酔の診療報酬で病院の利益を増加させるセコい方法

 「訪問診療の報酬」という形で、半分詐欺まがいのことをして稼いでいる開業医が都会には多いというニュースを耳にされただろうか?

 麻酔の診療報酬でも、詐欺まがいのことをして稼いでいる病院があるらしい。これはあくまで噂で聞いた話なので、真実かどうかはともかく・・・・・。

【1】 実際には、1 アンプルの薬品を 2 つに分けて、2 人の患者に使用したのに、それぞれの患者に 1 アンプルずつを請求して、1 アンプル分の薬品代を稼ぐ。

 具体的には、例えば、

(1) プロポフォール 20ml=1A
 麻酔導入に使用するプロポフォールは、通常は、20 ml も必要ないので、10 ml ずつの2本のシリンジに分けて吸っておき、2 人の患者の麻酔導入に使用する。請求は、各患者につき 1 アンプルずつ請求するので、病院は 1 アンプルしか使用していないのに、2 アンプル分の薬品代を支払ってもらえることになる。

(2) 1%アナペイン 10ml=1A 
 2 時間程度の手術であれば、0.5% アナペインは、10ml 程度もあれば十分なので、前者と同じように、あらかじめ倍希釈して2人の患者さんに使用できるようにしておく。請求は、各患者につき 1 アンプルずつ請求する。

(3) プリディオン 2ml(200mg)=1A
 筋弛緩の拮抗に使用するブリディオンは、通常、2mg/kg を使用するが、TOF で 4 発目まで出ていれば、 1mg/kg で充分なので、予め 100mg ずつの 2 人分に分けておく。請求は、各患者につき 1 アンプルずつ請求する。

※ 本来は、1A を 2 つに分けて 2 人の患者に使用したのなら、それぞれの患者には、1/2A だけ請求するのが当然だ。このやり方を見破るためには、病院に納入された薬品の数と、実際に病院内で消費された薬品数がほぼ同じかどうかを、監査の時などにチェックする必要があるが、薬品の数が膨大なために、そんなことをいちいちやってられないので見過ごされているようだ。また、薬剤部もグルになっていないとできないことなので、発覚したときには、当然のことながら薬剤部の責任も問われることにはなるだろう。


【2】 心エコーの評価結果を悪い方にシフトさせる。

 最近は、術前の心エコーもスクリーニング検査の1つとして、ルーチン化される傾向にある。以前は、循環器内科医のお得意芸であったが、近年は、非侵襲的な検査なので、検査室で検査技師さんが施行していることも多いだろう。また、術前診察維持に麻酔科医自身が施行している施設もあるかもしれない。

 術前の心エコーの結果を、検査技師さんたちに「診療報酬が増えるから、少しでも逆流があったら、可及的にⅡ度という評価をしてほしい。」と麻酔科からお願いするか、麻酔科医自らが心エコーを実施して、わざと少しの逆流でも「Ⅱ度」と評価するらしい。

 MR なり AR なり、 TR がⅡ度以上あれば、「麻酔困難」ということで、診療報酬が 1.3 倍くらいにまで跳ね上がる。時々、心エコー担当の検査技師さんたちに差し入れをすれば、麻酔科の診療報酬は、全体で 1 割程度は、アップするはずだ。

※ これも、一般的な心エコー評価の結果として、Ⅱ度以上の逆流が、手術患者の 2 割以上に認めれるようであれば、おかしいということで、第 3 者的な評価が介入するべきであるが、実際には難しいであろう。


【3】 全身麻酔の必要がなく、脊椎麻酔で可能な手術をすべて全身麻酔で行う。

 「病院のため」とか言いながら、患者が希望もしていないのに、「手術中は分からない方がいいですよね~。背中から針刺されるのっていやでしょう!?」とか言いながら、下肢手術や痔核手術の患者も全員、全身麻酔で行う。

 診療報酬は 8 ~10 倍になるから。この方法を積極的に取り入れている病院も多いんじゃないかな。

最後に、こんなことをするのは保険医としては最低だから、けっしてやらないように。もしも、現在すでにやっている人は、止めようね。正当な請求をして、正当な報酬だけいただきましょう。不正請求がばれたら、本当に大変ですよ。保険医の資格も数年間停止されちゃいますからね。

「どうせ、そんなことばれっこね~よ。」なんて思っていると、ひどい目に会いますよ。私のようなチクリ屋も、周辺には居るかもしれませんからね。

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