【投】 成人における術後嘔気嘔吐予防のための低用量ドロペリドール

成人における術後嘔気嘔吐予防のための低用量ドロペリドール (≤1 mg or ≤15 μg kg-1):無作為コントロール研究の定量的システマチックレビュー

Low-dose droperidol (≤1 mg or ≤15 μg kg−1) for the prevention of postoperative nausea and vomiting in adults: quantitative systematic review of randomised controlled trials
Schaub, Isabelle, et al.
European Journal of Anaesthesiology: June 2012 - Volume 29 - Issue 6 - p 286–294

【背景】
 ドロペリドールはヨーロッパ諸国で術後嘔気嘔吐 (PONV) 予防のために広く用いられている.しかし,低用量ドロペリドールが PONV 防止にどのくらい効果的かは不明確である.

【目的】
 成人における低用量ドロペリドールの PONV 防止効果と用量-反応性を検証する.

【方法】
 無作為コントロール研究のメタ解析を伴うシステマチックレビュー.データは 2011 年6月までの包括的な電子データベース (Medline, Embase, Central) 検索から得られた.論文の参考文献からも追加検索が行なわれた.使用言語の制限はなされていない.論文採用の基準は,全身麻酔下で手術が行なわれた成人を対象にしてドロペリドール ≤1 mg or ≤15 μg kg−1 投与群をプラシーボ群(あるいは無治療)と比較して PONV について報告している無作為試験.

【結果】
 25研究 (2957名) が分析された.ドロペリドール投与量は 0.25-1.0 mgだった.術後早期 (6 hr 以内) の嘔気予防についての相対危険度 (RR) は 0.45 (95% CI, 0.35-0.58)で,1名のイベントを予防するために必要なドロペリドール投与症例数 (NNT) は,低,中等度,高度基準リスク(すなわちコントロール群のイベント発生率 25, 50, 75%)で,それぞれ 7, 4, 2だった.術後早期の嘔吐予防については,RR 0.65 (95% CI, 0.57-0.74), NNT 11, 6, 4だった.術後遅発性 (24 hr 以内) 嘔気予防については,RR 0.74 (95% CI, 0.62-0.87), NNT 15, 8, 5だった.術後遅発性嘔吐については,RR 0.61 (95% CI, 0.47-0.80), NNT 10, 5, 3だった.ドロペリドールは頭痛のリスクを減少させたが,不穏のリスクを増加させた.これらの結果については用量-反応性の証明は得られなかった.鎮静,めまいの発生には差がなかった.ドロペリドール 0.625 mg の投与を受けた2名の患者が錐体外路症状を呈した.心毒性のデータは報告されなかった.

【結語】
 ドロペリドール 1mg 以下の予防投与は制吐効果を示す.薬剤の副作用は量依存性であることが多いので,1mg 以上のドロペリドールを止める論拠となる.

<投稿者名>
TEE Fan

<投稿者コメント>
当院では IV-PCA 使用患者に 1mg で使用しており,今のところ目立った副作用には遭遇していないが,お年寄りにはもう少し減らしてもいいのかな.

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