Q:プロポフォールの基本使用量は? それを増減する主な要因は?

A:プロポフォールの添付書によれば、その標準投与量は、2~2.5mg/kg とされている。つまり、用量を増減するためのもっとも重要な要因として「体重」を挙げているのだ。これは、麻酔薬に限らず、経静脈的に投与する薬物の場合には、多くの場合、適用される手法である。

循環作動薬の多くは、〇〇mg/kg/min といった持続投与量が推奨される。これとて、若年者であれ、高齢者であれ、時間の進み方は同じなので、もっとも重要な要因は体重と言うことになる。

『投与量を増減するための最も重要な要因は「体重」である。』というのは、ある程度、普遍性のある内容であろう。なぜなら、生理学的に考えて、体重が多ければ、必然的に、その個体の有する血液量(経静脈的に投与した薬物がまず希釈されるコンパートメント)や、細胞外液量(血管内から血管外へと急速に拡散する過程で、薬物が希釈されるコンパートメント)が多いわけだから、その体重に応じて、投与量を増加させないと、細胞レベルでは同じ薬物濃度にはならないであろうから。

 しかし、投与量を増減するための要因としては、これ以外にも重要な要素がある。それは、「細胞の薬物感受性」である。この薬物感受性という点で、神経系をその標的臓器としている麻酔薬に関する限り、もっとも大きな要因は、その個体の「生物学的年齢」である。

 また、もう一つの要因は、同じ年齢、同じ体重であっても、その感受性を変容させてしまうような同種同効の薬物や、相互作用の濃厚な薬物の存在である。

 教科書的には、他にも個体の感受性に影響するさまざまな要因が記されている。肝臓や腎臓の機能、血中の蛋白質量、心拍出量などなど。しかし、実際の臨床で通常出会う患者では、そのほとんどの患者は、血中の蛋白質量や心拍出量にそれほど大きな差はない。

 また、麻酔の導入と言う短期的な管理を行う過程では、肝臓や腎臓の機能といった薬物の分解、代謝、排泄過程に関連する機能はとりあえず関係がない。もちろん、長時間にわたって持続投与をする場合には、大いに関係してくる要因ではあるが。

 通常の麻酔導入において、鎮静剤である「プロポフォール」と言う神経系に作用する薬物の投与量を決める際に、もっとも重要な要因は、以下の 3 要因である。

(1)体重

(2)年齢

(3)併用薬物

 (1)の「体重」を勘案する手法については、非常に簡単である。体重の増減に応じで、薬物投与量を正比例的に増減するだけである。体重を掛けるだけで推奨投与量を算出できる。

 では、(2) の「年齢」や(3) の「併用薬物」についてはどういった基準で、プロポフォールの投与量を増減すればよいのであろうか。この点については、別の Q&A で話題にしよう。

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