臨床診療における ASA-PS スケールの信頼性

Reliability of the American Society of Anesthesiologists physical status scale in clinical practice
Br. J. Anaesth. (2014) 113 (3): 424-432. doi: 10.1093/bja/aeu100 First published online: April 11, 2014

・仮想症例と診療録レビューに依存したこれまでの研究では、ASA-PS スケールの評価者間信頼性(異なる評価者が同じ結果を出せる信頼性)に疑問が持たれてきた。そこで、著者らは、後ろ向きコホート研究を実施して、臨床現場での評価者間信頼性と妥当性を評価した。

・コホートには、2010 年 3 月から 2011 年 12 月に、カナダ、オンタリオ州、トロントの高次専門教育施設で待機的非心臓手術を受ける全ての成人患者(≧18 歳)が含まれた。著者らは、術前評価診察室と手術室とで割り当てられた ASA-PS スコアを比較することによって、評価者間信頼性を評価した。また、ASA-PS スケールと、患者の術前特性と誦後転帰との関連性を測定することによって、ASA-PS の妥当性も評価した。

・コホートには 10864 人の患者が含まれ、5.5% は ASA I、42.0% は ASA II、46.7% は ASA III、5.8% は ASA IV に分類された。ASA-PS スコアは、中程度の評価者間信頼性を有しており(κ 0.61)、診察室と手術室とで同一の ASA-PS を割り当てらた患者が 67%(n=7279)、98.6%(n=10712)人の患者で、1 対の評価の差が互いに 1 クラス以内であった。ASA-PS スケールは、患者の年齢(スピアマンの ρ、0.23)、チャールソンの併存疾患指数(ρ=0.24)、改訂心臓リスク指標(ρ=0.40)、在院期間(ρ=0.16)と相関していた。それは、中等度の院内死亡(ROC 曲線下面積 0.69)と心臓合併症(ROC 曲線下面積 0.70)予測能を有していた。

・その固有の主観性と一致し、ASA-PS スケールは、臨床診療において中等度の評価者間信頼性を有している。また、患者の術前の健康状態のマーカーとして有効性を示している。
ASA-PS の術前診察時と手術室での評価との一致度.png
図 1 術前診察室での ASA-PS 評価によって分類された階層内での手術室での ASA-PS 評価の分布

[!]:カナダのこの病院では、ASA IV が、5.8% にも割り当てられている。当院では年に数例だろう。ASA-PS は、かなりいい加減なものだが、当たらずとも遠からずと言ったところで、そこそこ有用であるということだな。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック