【投】 大動脈弁置換術と僧帽弁置換術後の弁周囲逆流の臨床予後の差異

Different Clinical Outcome of Paravalvular Leakage After Aortic or Mitral Valve Replacement
Cho IJ, et al.
Am J Cardiol 2011;107:280 –284

【背景】
・大動脈弁置換術 (AVR) と僧帽弁置換術 (MVR) はもっとも行われている人工弁置換術だが,弁周囲逆流 (PVL) の予後が異なるかどうかは不明である.

【目的】
・MVR 後の PVL の方が,より高い圧較差にさらされるため,AVR 後の PVL の方が予後がよいという仮説を立てた.

【方法】
・12年間に82名の PVL 症例が同定された.
・重症ですぐに外科的治療が行われた例,ベーチェット病,心内膜炎,両弁に PVL があった例が除外され,軽度から中等度 PVL の54例 (女性21名,平均 56±14歳,AVR 23例) を対象に研究が行われた.
・エンドポイントは,心臓死,全死亡率,再手術,心不全による緊急入院とした.

【結果】
・追跡中央値 35ヶ月の間,27イベントが生じた(再手術 23,心臓死 2,非心臓死 1,心不全による入院 1).
・コックス回帰分析により,PVL の弁位のみがイベントフリー生存率の独立予測因子であることがわかった.
・予測8年イベントフリー生存率は MVR より AVR での PVL 例が有意に高かった (70 ± 12% vs 16± 8%, p <0.0001).

【結語】
・AVR 後の PVL は MVR 後に比べて良い長期予後を示す.
・AVR 後の PVL に対しての再手術は様子を見て延期できるが,MVR 後の PVL はより積極的な治療を考慮すべきである.

<投稿者名>
TEE Fan

<投稿者コメント>
・ A 弁と M 弁で PVL の予後がこんなに違うことに驚いた.
・弁手術中の PVL を放置して良いかどうかは麻酔科医としても気になるところだが,この研究では M 弁の PVL はほとんど術後1年以降に指摘されており,術中に消失していても油断できないということか.

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