Q:麻酔導入時の薬剤投与と効果発現のタイムラグとは?
一般に、末梢静脈に確保した輸液ラインから薬剤を投与する場合、薬液シリンジを接続する三方活栓と、患者の静脈に留置してあるカテーテルとの間には数十センチメートルの距離がある。このチューブ内容量は、実際にはチューブ内径とチューブ長に依存して決まるが、通常は 2~5mL 程度はあるはずだ。
一般に使用されている成人用の点滴セットの場合、20滴≒1mL となっているので、シリンジから注入した薬液の全量が確実に静脈内に投与されるまでには、輸液剤が 40~100 滴だけ滴下する必要がある。ここでは、この量を「ライン死腔量」と呼ぶことにする。
特にライン確保した留置カテーテル径が細い場合には、それだけの敵数が滴下するためにはそれなりの時間がかかる。1 秒に 1 滴しか滴下しない速度なら、20 秒で 1mL、5mL が滴下するには 100 秒(1 分 40 秒)もかかってしまうことになる。
筋弛緩剤が静脈内に投与されてから実際に筋弛緩が得られるまでの時間は、現在一般に使用されているロクロニウムでは、0.6 mg/kg 投与の場合、添付文書によれば、作用発現時間(秒)は 84.8±28.5 とあり、約 1 分 30 秒である。
もしも、麻酔導入時に、ライン死腔量が 5 mL で、前述の「1 秒に 1 滴しか滴下しない速度」の点滴ラインを使用した場合、三方活栓からロクロニウムを注入した直後にタイマーをオンにして時間を測定したとすれば、ロクロニウムの効果発現には「1 分 40 秒」+「1 分 30 秒」=「3 分 10 秒」かかるという計算になる。
しかし、実際には患者に必要なロクロニウムの用量が 3 mL であったとすれば、ライン死腔量が 5 mL であっても、2mL=40 滴が滴下した後には、ロクロニウムが少しずつ静脈内に入りだすので、最短「40 秒」+「1 分 30 秒」=「2 分 10 秒」で効果発現するかもしれない。
このように、薬液を三方活栓から投与した時から効果発現までの時間と、薬理学的な効果発現時間との間にはライン死腔量に起因するタイムラグがある。これ以外にも、患者自身の心拍出量とか薬剤感受性の個人差といった、薬理学的な効果発現時間に影響する要因もある。しかし、通常の麻酔導入時に問題となるもっとも大きな要因は、ライン死腔量に起因するタイムラグである。
では、このタイムラグを少なくするにはどうすればよいだろうか?
1つの方法は、三方活栓を直に静脈留置カテーテルに接続する。こうしておけば、ライン死腔量をほぼゼロにできる。しかし、三方活栓と留置カテーテルの接続部分はある程度大きさがあり、固定時に患者の皮膚を圧迫してしまうので、あまり現実的ではない。
別の方法は。太めの静脈カテーテルを留置して、点滴ラインのクレンメを全開にして、点滴チャンバー内に滴下する液体が「点滴」ではなく「線滴」状態になるくらいに投与速度をアップする。しかし、これは、末梢静脈ライン確保が難しい症例ではいつも可能とは限らない。
3つ目の方法は、ライン死腔量の少ない三方活栓付き延長管を使用すること。しかし、この場合、死腔量が少ないということは、通常はチューブ内径が小さく、点滴の投与速度が制限されるので、脊椎麻酔の際や、相当な脱水があり短時間で急速に容量負荷を行いたい症例、ある程度の出血が予測される症例には不向きである。
4つ目の方法は、ライン死腔量と滴下速度から薬液が確実に静脈内に入ったであろう時間を推定して、その時点で、タイマーをオンにする。
5つ目の方法は、ライン死腔量に相当する輸液剤を、別のシリンジで押入れしてからタイマーをオンにする。
私は、通常は5つ目の方法で麻酔導入を行っている。
一般に使用されている成人用の点滴セットの場合、20滴≒1mL となっているので、シリンジから注入した薬液の全量が確実に静脈内に投与されるまでには、輸液剤が 40~100 滴だけ滴下する必要がある。ここでは、この量を「ライン死腔量」と呼ぶことにする。
特にライン確保した留置カテーテル径が細い場合には、それだけの敵数が滴下するためにはそれなりの時間がかかる。1 秒に 1 滴しか滴下しない速度なら、20 秒で 1mL、5mL が滴下するには 100 秒(1 分 40 秒)もかかってしまうことになる。
筋弛緩剤が静脈内に投与されてから実際に筋弛緩が得られるまでの時間は、現在一般に使用されているロクロニウムでは、0.6 mg/kg 投与の場合、添付文書によれば、作用発現時間(秒)は 84.8±28.5 とあり、約 1 分 30 秒である。
もしも、麻酔導入時に、ライン死腔量が 5 mL で、前述の「1 秒に 1 滴しか滴下しない速度」の点滴ラインを使用した場合、三方活栓からロクロニウムを注入した直後にタイマーをオンにして時間を測定したとすれば、ロクロニウムの効果発現には「1 分 40 秒」+「1 分 30 秒」=「3 分 10 秒」かかるという計算になる。
しかし、実際には患者に必要なロクロニウムの用量が 3 mL であったとすれば、ライン死腔量が 5 mL であっても、2mL=40 滴が滴下した後には、ロクロニウムが少しずつ静脈内に入りだすので、最短「40 秒」+「1 分 30 秒」=「2 分 10 秒」で効果発現するかもしれない。
このように、薬液を三方活栓から投与した時から効果発現までの時間と、薬理学的な効果発現時間との間にはライン死腔量に起因するタイムラグがある。これ以外にも、患者自身の心拍出量とか薬剤感受性の個人差といった、薬理学的な効果発現時間に影響する要因もある。しかし、通常の麻酔導入時に問題となるもっとも大きな要因は、ライン死腔量に起因するタイムラグである。
では、このタイムラグを少なくするにはどうすればよいだろうか?
1つの方法は、三方活栓を直に静脈留置カテーテルに接続する。こうしておけば、ライン死腔量をほぼゼロにできる。しかし、三方活栓と留置カテーテルの接続部分はある程度大きさがあり、固定時に患者の皮膚を圧迫してしまうので、あまり現実的ではない。
別の方法は。太めの静脈カテーテルを留置して、点滴ラインのクレンメを全開にして、点滴チャンバー内に滴下する液体が「点滴」ではなく「線滴」状態になるくらいに投与速度をアップする。しかし、これは、末梢静脈ライン確保が難しい症例ではいつも可能とは限らない。
3つ目の方法は、ライン死腔量の少ない三方活栓付き延長管を使用すること。しかし、この場合、死腔量が少ないということは、通常はチューブ内径が小さく、点滴の投与速度が制限されるので、脊椎麻酔の際や、相当な脱水があり短時間で急速に容量負荷を行いたい症例、ある程度の出血が予測される症例には不向きである。
4つ目の方法は、ライン死腔量と滴下速度から薬液が確実に静脈内に入ったであろう時間を推定して、その時点で、タイマーをオンにする。
5つ目の方法は、ライン死腔量に相当する輸液剤を、別のシリンジで押入れしてからタイマーをオンにする。
私は、通常は5つ目の方法で麻酔導入を行っている。


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