Q:穏やかな覚醒を得るためには?
麻酔が深い間は、いろいろな身体上の不快感が中枢に伝達されないので、種々の有害反応が出現しなくて済んでいる。ところが、麻酔薬を切って、麻酔深度が浅くなってくると、身体上の不快感が次第に中枢に伝達されるようになり有害反応が出現してくるわけだ。
では、覚醒時にそういった有害反応が生じないようにするにはどうすればよいだろうか。患者さんの身になって考えてみれば分かるのではないだろうか。
気管挿管を伴わない腰部硬膜外麻酔+マスク全麻の場合には、覚醒時にもほとんど有害反応は現れない。創部痛は硬膜外麻酔で遮断されており、一方、気道の方にはなんら刺激となるものが存在しないので、覚醒時に麻酔が浅くなってきても有害反応を生じる原因となる刺激自体が存在しない。
通常の、気管挿管を伴う全身麻酔で 2 時間以上を要するような手術の場合には、麻酔から覚醒する段階で、身体上の不快感として挙げられるものは、気管に挿入された挿管チューブ、尿道に挿入された導尿カテーテル、手術創やドレーン挿入部の疼痛などであろう。
麻酔から覚醒させるためには、鎮静剤と筋弛緩薬を切らなくてはならない。鎮静が浅くなって覚醒してきて、同時に筋弛緩効果がなくなってくれば、呼名に対して反応が得られるようになる。
しかし、この時点で、十分量のオピオイド(通常は、フェンタニルかレミフェンタニル)の効果部位濃度(1~2ng/mL)が維持されていれば、身体上の不快感はかなり低減されるために、有害反応はほとんど発生しない。あるとしても、吸痰時のちょっとした咳嗽反射程度である。
麻酔導入時に、十分量のフェンタニルやレミフェンタニルが併用投与されていれば、気管挿管を行っても、有意な侵害刺激とはならず、ほとんど交感神経刺激症状が発生しないのと同じである。
覚醒時に、オピオイド(通常は、フェンタニルかレミフェンタニル)の効果部位濃度を維持してやることが穏やかな覚醒を得るための 1 つの方法である。レミフェンタニルを使用しているのならば、手術終了と同時に中止してしまうのではなくて、抜管が終了するまで効果部位濃度が 1~2ng/mL となるように維持投与する。
レミフェンタニルとフェンタニルを併用している場合には、いずれも同じμレセプターにほぼ同力価で作用すると考えられているので、両効果部位濃度の合計値が 1~2ng/mL となるように維持投与する。
フェンタニル単独やレミフェンタニルと併用している場合には、その辺がやや経験を要するので、麻酔薬投与のシミュレータがあると便利だ。電子麻酔記録装置の多くは、シミュレータを内蔵しているので、電子麻酔記録を導入するのも、麻酔に質アップに非常に役立つ。
また、麻酔から覚醒させる前に、通常もっとも大きな有害反応である咳嗽反射を抑制するために、気管チューブを早めに抜去してしまう、深麻酔下抜管もまた穏やかな覚醒を得るための別の方法である。また、気管チューブをラリンジアルマスクに入れ直してしまうことによっても、覚醒時の気道への刺激がかなり減少できるので有効だ。
ラリンジアルマスクで管理した症例では、覚醒前にカフのエアーを早めに抜いておくのも良いと思っている。
<穏やかな覚醒を得るためには!>
・十分な鎮痛をしておき、抜管時にフェンタニルやレミフェンタニルの効果部位濃度が 1~2ng/mL となるように維持してやる。
・覚醒前に、刺激になりそうな挿入物をできるだけ除去しておく~深麻酔下に早めに抜管を行う。
・ラリンジアルマスクのカフ・エアーを早めに抜いておく。
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通常の、気管挿管を伴う全身麻酔で 2 時間以上を要するような手術の場合には、麻酔から覚醒する段階で、身体上の不快感として挙げられるものは、気管に挿入された挿管チューブ、尿道に挿入された導尿カテーテル、手術創やドレーン挿入部の疼痛などであろう。
麻酔から覚醒させるためには、鎮静剤と筋弛緩薬を切らなくてはならない。鎮静が浅くなって覚醒してきて、同時に筋弛緩効果がなくなってくれば、呼名に対して反応が得られるようになる。
しかし、この時点で、十分量のオピオイド(通常は、フェンタニルかレミフェンタニル)の効果部位濃度(1~2ng/mL)が維持されていれば、身体上の不快感はかなり低減されるために、有害反応はほとんど発生しない。あるとしても、吸痰時のちょっとした咳嗽反射程度である。
麻酔導入時に、十分量のフェンタニルやレミフェンタニルが併用投与されていれば、気管挿管を行っても、有意な侵害刺激とはならず、ほとんど交感神経刺激症状が発生しないのと同じである。
覚醒時に、オピオイド(通常は、フェンタニルかレミフェンタニル)の効果部位濃度を維持してやることが穏やかな覚醒を得るための 1 つの方法である。レミフェンタニルを使用しているのならば、手術終了と同時に中止してしまうのではなくて、抜管が終了するまで効果部位濃度が 1~2ng/mL となるように維持投与する。
レミフェンタニルとフェンタニルを併用している場合には、いずれも同じμレセプターにほぼ同力価で作用すると考えられているので、両効果部位濃度の合計値が 1~2ng/mL となるように維持投与する。
フェンタニル単独やレミフェンタニルと併用している場合には、その辺がやや経験を要するので、麻酔薬投与のシミュレータがあると便利だ。電子麻酔記録装置の多くは、シミュレータを内蔵しているので、電子麻酔記録を導入するのも、麻酔に質アップに非常に役立つ。
また、麻酔から覚醒させる前に、通常もっとも大きな有害反応である咳嗽反射を抑制するために、気管チューブを早めに抜去してしまう、深麻酔下抜管もまた穏やかな覚醒を得るための別の方法である。また、気管チューブをラリンジアルマスクに入れ直してしまうことによっても、覚醒時の気道への刺激がかなり減少できるので有効だ。
ラリンジアルマスクで管理した症例では、覚醒前にカフのエアーを早めに抜いておくのも良いと思っている。
<穏やかな覚醒を得るためには!>
・十分な鎮痛をしておき、抜管時にフェンタニルやレミフェンタニルの効果部位濃度が 1~2ng/mL となるように維持してやる。
・覚醒前に、刺激になりそうな挿入物をできるだけ除去しておく~深麻酔下に早めに抜管を行う。
・ラリンジアルマスクのカフ・エアーを早めに抜いておく。
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