Q:麻酔導入時のロクロニウム投与量をどうするか?
A:一般的には、ロクロニウムの標準投与量は、0.6mg/kg とされている。また、迅速導入時には、日本の保険診療範囲内で行う限りは、上限量は 0.9.mg/kg とされている。
したがって、本問に対する答えは、「通常は、0.6mg/kg を投与し、より高用量を必要とする場合、つまり迅速導入時には 0.9mg/kg を投与する。」というのが正解である。
最近の成書には、迅速導入時には「1.0mg/kg を使用する。」とか、さらに「1.2mg/kg」や「1.5mg/kg」という記載さえある。もしも、あなたが、ブラックジャックなら、それも構わないと思うが、日本国内で保険医の資格の範囲で行うのであれば、上限量はやはり「0.9mg/kg」としておいた方だ賢明だ。
薬剤投与に関わる事象で、何かしら問題が発生した場合は、真っ先に正当性が問われるのは薬剤投与の方法である。もしも、それが、薬剤添付書に沿わない行為であれば、それだけで「有罪」とされかねない。
【銘記】:ロウロニウムの標準投与量=0.6mg/kg、上限量は 0.9mg/kg
さて、標準投与量の 0.6mg/kg という投与量はどのように決定されたのであろうか。ロクロニウムが一般に使用される以前は、ベクロニウム(商品名:マスキュラックス)という薬剤が一般的に使用されていた。
ロクロニウムは、ベクロニウムと同じステロイド骨格を有した筋弛緩剤であるが、作用力価は、ベクロニウムよりもかなり低く、約 1/6 とされている。ベクロニウムの標準投与量が 0.08~0.1mg/kg であったのに対して、ロクロニウムの投与量は、その 8 倍弱もの高用量を標準投与量としている。
本来ならば、0.06×6=0.48mg/kg で良いはずなのだが、後発の新しい筋弛緩剤に対する要望としては、効果の発現がより迅速であることが期待されていたことから、その標準投与量は 0.6mg/kg とされた。高用量を使用すればするほど、作用発現時間を短縮できるからだ。
作用発現時間がベクロニウムと同じで良いのであれば、その投与量は、0.48mg/kg で良いはずなのだ。また、それほど気管挿管までの時間を短縮しなくてはいけない理由がないのであれば、もっと少ない用量でも気管挿管に必要な筋弛緩は得られる、待てさえすれば。
ロクロニウムは、投与量を増やせば増やすほど迅速な効果発現が期待できる。しかし、その反面、作用持続時間が長くなり、短時間手術ではスガマデクスによる拮抗の適用範囲まで効果部位濃度が低下するのに時間を要したり、スガマデクスを倍量投与しなくてはいけないことにもなる。
【銘記】:過量投与では罪を問われる可能性があるが、過小投与で罪を問われることはない。
ロクロニウムを使用していて、過量となりやすいのは、肥満患者と、腎機能低下患者である。
肥満患者は、通常の健常者と同等な筋肉割合を有していることは少なく、脂肪層が多く、筋肉量は相対的に少ない。従って、本来必要な筋弛緩剤は、体重当たりで使用すると過量になってしまう。
また、腎機能や肝機能が中等度から高度に低下している患者では、標準量を投与しただけで、作用持続時間が延長し、手術が終了しても筋弛緩がなかなか消退しないことがある。さらには倍量投与の適用「PTC≧2」さえ出ず、挿管帰室せざるを得ない場合すらある。
・腎機能や肝機能に問題のない患者で、手術が 1 時間以上かかる手術では、標準投与量 0.6mg/kg を使用する。
・高度な腎機能低下、あるいは肝機能低下のある症例、手術が 1 時間以内に終了する症例では、0.3mg/kg を使用し、挿管までは 3 分待つ。
・肥満患者では、投与量をその肥満度応じて減量する。理想体重で計算した投与量を基準として、推定される筋肉量増加分jを加味して使用するのが無難だ。
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短時間手術の際にスガマデクスでリバースしなくて済むようにする方法
したがって、本問に対する答えは、「通常は、0.6mg/kg を投与し、より高用量を必要とする場合、つまり迅速導入時には 0.9mg/kg を投与する。」というのが正解である。
最近の成書には、迅速導入時には「1.0mg/kg を使用する。」とか、さらに「1.2mg/kg」や「1.5mg/kg」という記載さえある。もしも、あなたが、ブラックジャックなら、それも構わないと思うが、日本国内で保険医の資格の範囲で行うのであれば、上限量はやはり「0.9mg/kg」としておいた方だ賢明だ。
薬剤投与に関わる事象で、何かしら問題が発生した場合は、真っ先に正当性が問われるのは薬剤投与の方法である。もしも、それが、薬剤添付書に沿わない行為であれば、それだけで「有罪」とされかねない。
【銘記】:ロウロニウムの標準投与量=0.6mg/kg、上限量は 0.9mg/kg
さて、標準投与量の 0.6mg/kg という投与量はどのように決定されたのであろうか。ロクロニウムが一般に使用される以前は、ベクロニウム(商品名:マスキュラックス)という薬剤が一般的に使用されていた。
ロクロニウムは、ベクロニウムと同じステロイド骨格を有した筋弛緩剤であるが、作用力価は、ベクロニウムよりもかなり低く、約 1/6 とされている。ベクロニウムの標準投与量が 0.08~0.1mg/kg であったのに対して、ロクロニウムの投与量は、その 8 倍弱もの高用量を標準投与量としている。
本来ならば、0.06×6=0.48mg/kg で良いはずなのだが、後発の新しい筋弛緩剤に対する要望としては、効果の発現がより迅速であることが期待されていたことから、その標準投与量は 0.6mg/kg とされた。高用量を使用すればするほど、作用発現時間を短縮できるからだ。
作用発現時間がベクロニウムと同じで良いのであれば、その投与量は、0.48mg/kg で良いはずなのだ。また、それほど気管挿管までの時間を短縮しなくてはいけない理由がないのであれば、もっと少ない用量でも気管挿管に必要な筋弛緩は得られる、待てさえすれば。
ロクロニウムは、投与量を増やせば増やすほど迅速な効果発現が期待できる。しかし、その反面、作用持続時間が長くなり、短時間手術ではスガマデクスによる拮抗の適用範囲まで効果部位濃度が低下するのに時間を要したり、スガマデクスを倍量投与しなくてはいけないことにもなる。
【銘記】:過量投与では罪を問われる可能性があるが、過小投与で罪を問われることはない。
ロクロニウムを使用していて、過量となりやすいのは、肥満患者と、腎機能低下患者である。
肥満患者は、通常の健常者と同等な筋肉割合を有していることは少なく、脂肪層が多く、筋肉量は相対的に少ない。従って、本来必要な筋弛緩剤は、体重当たりで使用すると過量になってしまう。
また、腎機能や肝機能が中等度から高度に低下している患者では、標準量を投与しただけで、作用持続時間が延長し、手術が終了しても筋弛緩がなかなか消退しないことがある。さらには倍量投与の適用「PTC≧2」さえ出ず、挿管帰室せざるを得ない場合すらある。
・腎機能や肝機能に問題のない患者で、手術が 1 時間以上かかる手術では、標準投与量 0.6mg/kg を使用する。
・高度な腎機能低下、あるいは肝機能低下のある症例、手術が 1 時間以内に終了する症例では、0.3mg/kg を使用し、挿管までは 3 分待つ。
・肥満患者では、投与量をその肥満度応じて減量する。理想体重で計算した投与量を基準として、推定される筋肉量増加分jを加味して使用するのが無難だ。
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