Q:経尿道的前立腺切除の麻酔はどうするか?

A:昔は、TUR 症候群と呼ばれる低ナトリウム血症を早期発見するために、覚醒させておいた方が良いとされ、脊椎麻酔が推奨された。術中麻酔だけを考えれば、麻酔法は何でもよい。

しかし、手術終了後には、切除部位からの出血を少なくする目的での尿道カテーテルの尾側牽引による尿道部の不快感が、術後管理上大きな問題になることから、硬膜外カテーテルを利用した術後硬膜外持続鎮痛が効果的である。

そのような経緯から、当院では、腰部硬膜外麻酔とマスクによる軽い全身麻酔の併用で行い、術後は、翌朝まで硬膜外カテーテルによる持続鎮痛を行っている。

前立腺の知覚神経は、S2-4 に起始しており、術中の麻酔としては、S (仙骨)領域さえしっかり麻酔されれば問題ないようである。したがって、サドルブロック、低位脊椎麻酔、硬膜外麻酔などでも十分である。

しかし、若干時間を要する手術であり、会陰部を露わにする手術であることから、軽い全身麻酔で意識を落とした方が、患者さんにも優しいと思われる。

サドルブロックや低位脊椎麻酔を行う場合には問題にならないが、腰部硬膜外麻酔で、経尿道的前立腺切除に対応する場合に、個人的にこだわっている手技がある。

というのも、昔、腰部硬膜外麻酔を実施した際のことだ。泌尿器科医が最初に膀胱鏡を尿道に挿入した途端、マスク全身麻酔で眠っていた患者さんが急に暴れ出したのだ。

通常の腰部硬膜外麻酔では、S 領域が麻酔されるのに若干時間を要するようだ。膀胱鏡を尿道に挿入した時点では、まだ十分に S 領域が麻酔されていなかったために起こったことだ。

その後は、このようなことを起こさないために、できるだけ早期に S 領域に十分な麻酔が及ぶように、
(1) 硬膜外穿刺はできるだけ低位、すなわち、L4/5 か L5/S1 で行う。
(2) 硬膜外への薬液のワンショット注入は、硬膜外針のベーベルを尾側に向けて行う。
(3) 硬膜外カテーテルの挿入も、ベーベルを尾側にしたまま尾側に向けて行う。
この 3 点を心掛けている。

この方法で行うようになってからは、膀胱鏡挿入時の体動は全くなくなった。また、この方法の別の利点は、術後の硬膜外鎮痛時に、下肢のしびれを訴える患者がほとんどいなくなったことだ。

【銘記】:経尿道的前立腺切除の麻酔は、S 領域をしっかり行え!

個人的には、硬膜外カテーテルを尾側に向けて挿入するのは、この術式だけだ。
除睾術の場合と同様に、経尿道的前立腺切除術の場合も下肢(L 領域)を麻酔する必要は全くない。

最近、シモネタばっかりやな~!?

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