GCS≦8 の外傷患者における病院前挿管時の鎮静の有無が転帰に及ぼす影響

・無意識(Glasgow Coma Scale[GCS]3~8)は、国のガイドラインにしたがうと挿管を必要とするが、このアプローチを支持するエビデンスが著しく欠如している。本研究は、GCS≦8 の外傷患者における病院前挿管時の鎮静の有無が予後に及ぼす響を評価する。

・2002 年から 2013 年まで、ドイツ外傷協会の外傷登録 DGU に登録された重傷外傷患者の後ろ向きコホート分析を実施した。直接入院となった生存患者で現場での GCS≦8 であった患者だけが含まれた。観察された転帰は、改訂外傷重症度分類 バージョン II(RISC-II)にから導出した予期される転帰を相応させた。さらに、標準化死亡率(SMR)を様々なサブ群について計算した。早期神経学的転帰を、グラスゴーアウトカムスケールを用いて分類した。

・合計 21242 例の患者が試験の包含基準を満たした。合計 18975 人の患者(89.3%)が入院前の挿管を受けた。挿管率は、GCS スコア値が低下するにつれて連続的に増加していた。観察された死亡率と予想さらた死亡率との差は、挿管患者(42.2% [95%信頼区間(CI)、41.5%-42]、RISC-II 予後 41.4%; SMR 1.020 [95% CI, 1.003~1.037]の方が、挿管されなかった患者(30.0% [95% CI, 28.1-31.9%]、RISC-II 予後 26.6%、SMR 1.128 [95% CI, 1.057-1.199])よりも低かった。.挿管前に鎮静されている患者は、鎮静なしで挿管された患者と比較して、観察された死亡率の有意な低下(37.7% [95%CI、36.7-38.7%]、RISC-II 予後 39.0%、SMR 0.967[95%CI、0.951-0.983])を呈し、早期神経学的転帰不良が少ないことと関係していた。

・GCS≧8 の病院前挿管患者で観察された転帰は、非挿管患者と比較して予期される転帰よりも不良であることが少ないようだ。挿管前の鎮静は死亡率を低下させ、早期の神経学的転帰を改善する可能性がある。この問題を明確にするためにはさらなる研究が必要である。

[!]:外傷患者で意識レベルが低下しているということは、通常は頭部外傷で頭蓋内出血をきたしていると想定される患者である。鎮静下に気管挿管した方が確かに予後は良さそうだ。

【出典】
The Impact of Prehospital Intubation With and Without Sedation on Outcome in Trauma Patients With a GCS of 8 or Less.
J Neurosurg Anesthesiol. 2017 Apr;29(2):161-167. doi: 10.1097/ANA.0000000000000275.

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック