Q:DSI(遅延導入気管挿管)とは何か?
A:DSI(delayed sequence intubation) は RSI(rapid sequence induction/intubation:迅速導入気管挿管)に相対する言葉で、RSI が意識消失から気管挿管完了までの時間を最短にすることで、誤嚥のリスクを最小限にすることを目的としているのに対して、DSI は可及的に患者の酸素飽和度を低下させないことを目的としている。
RSI は、意識消失から気管挿管完了までの時間を最短にするために、鎮静剤と筋弛緩剤を一気にボーラス投与する。通常は、非再呼吸マスクによって十分な前酸素化を行った後に、薬剤を投与してバッグマスク換気などの補助呼吸を原則行わずに、輪状軟骨圧迫下に気管挿管を試みる。しかし、患者が不穏や興奮、せん妄状態にあって、十分な前酸素化が行えていない場合であっても、一か八かのいわば「賭け」に出なくてはならない。
これに対して、DSI は、鎮静剤としてケタミンを使用して、患者の自発呼吸や咽頭喉頭反射を温存しつつ、意識を喪失させて不穏や興奮、せん妄状態といった前酸素化を障害している要因を取り除き(解離状態)、非再呼吸マスクや NIV で十分な前酸素化を行った上で、筋弛緩剤を投与して気管挿管を試みる方法である。
RSI のように、鎮静剤と筋弛緩剤を一気にボーラス投与するのではなくて、ケタミンによって呼吸抑制を最小限としつつも意識喪失を起こさせ、それによって気管挿管に必要な前処置を十分に行えるようにする、いわばケタミンによる処置鎮静を行うのである。何を遅らせるのかと言うと、要するに十分な前酸素化が行えるように、筋弛緩剤の投与を遅らせるのである。
呼吸抑制作用の強いプロポフォールやミダゾラムなどは推奨されていない。
集中治療室で、不穏状態となっている重症呼吸不全患者や小児など前酸素化に協力的でない患者などに適用されてしかるべき方法である。
この図は、以下の文献から引用して日本語化した。
Delayed sequence intubation: a prospective observational study.
Ann Emerg Med. 2015 Apr;65(4):349-55. doi: 10.1016/j.annemergmed.2014.09.025. Epub 2014 Oct 23.
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Q:迅速導入(RSI)はどうやるか?
RSI は、意識消失から気管挿管完了までの時間を最短にするために、鎮静剤と筋弛緩剤を一気にボーラス投与する。通常は、非再呼吸マスクによって十分な前酸素化を行った後に、薬剤を投与してバッグマスク換気などの補助呼吸を原則行わずに、輪状軟骨圧迫下に気管挿管を試みる。しかし、患者が不穏や興奮、せん妄状態にあって、十分な前酸素化が行えていない場合であっても、一か八かのいわば「賭け」に出なくてはならない。
これに対して、DSI は、鎮静剤としてケタミンを使用して、患者の自発呼吸や咽頭喉頭反射を温存しつつ、意識を喪失させて不穏や興奮、せん妄状態といった前酸素化を障害している要因を取り除き(解離状態)、非再呼吸マスクや NIV で十分な前酸素化を行った上で、筋弛緩剤を投与して気管挿管を試みる方法である。
RSI のように、鎮静剤と筋弛緩剤を一気にボーラス投与するのではなくて、ケタミンによって呼吸抑制を最小限としつつも意識喪失を起こさせ、それによって気管挿管に必要な前処置を十分に行えるようにする、いわばケタミンによる処置鎮静を行うのである。何を遅らせるのかと言うと、要するに十分な前酸素化が行えるように、筋弛緩剤の投与を遅らせるのである。
呼吸抑制作用の強いプロポフォールやミダゾラムなどは推奨されていない。
集中治療室で、不穏状態となっている重症呼吸不全患者や小児など前酸素化に協力的でない患者などに適用されてしかるべき方法である。
この図は、以下の文献から引用して日本語化した。
Delayed sequence intubation: a prospective observational study.
Ann Emerg Med. 2015 Apr;65(4):349-55. doi: 10.1016/j.annemergmed.2014.09.025. Epub 2014 Oct 23.
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