心不全患者における左室駆出率・症状と待機的非心臓手術後の死亡率との関連

<キーポイント>
疑問:心不全の重症度と術後死亡リスクとの関連は?

結果:非心臓手術を受けた 609735 人の患者を対象としたこの後ろ向きコホート研究では、心不全と症状を有する患者の粗 90 日死亡率は 10.1% であった。心不全で無症状の患者では 4.9%。心不全のない患者では 1.2% であった。心不全のある患者はいずれの群でも、心不全のない患者群との間の調整された差は統計的に有意であった。

意義:症状の有無にかかわらず、心不全は術後 90 日死亡率のリスク増加と関連していた。

<要旨>
・心不全は術後死亡の確立された危険因子であるが、左心室駆出率と心不全の症状がどのように手術転帰に影響するかは完全には明らかではない。研究の目的は、心不全のない患者と比較して、心エコー検査(左室収縮機能障害)と臨床的(症状)重症度の様々なレベルで、心不全患者の術後死亡リスクを決定し、リスクが手術の複雑さの程度によってどのように異なるかを評価することであった。

・2009 年から 2016 年までの退役軍人手術の質改善プロジェクトデータベースにおける待機的非心臓手術を受けた成人患者全員についての米国多施設後ろ向きコホート研究で、合計 609735 例の患者記録が同定され、術後 1 年間の経過追跡で分析された(最終試験経過観察:2017 年 9 月 1 日)。暴露要因は、心不全、左室駆出率、手術から 30 日以内の心不全の徴候または症状の存在で、主要評価項目は、術後 90 日死亡率であった。

・47997 人の心不全患者(7.9%;平均[SD]年齢、68.6人[10.1]歳; 1391 人の女性[2.9%])と 561738 人の非心不全患者(92.1%;平均[SD]年齢 59.4[13.4]歳; 50862 人の女性[9.1%])からの転帰データを分析した。心不全のない患者と比較して、心不全のある患者のほうが術後 90 日死亡リスクが高かった(2635 vs 6881 90 日死亡;粗死亡リスク 5.49% vs 1.22%;調整絶対リスク差[RD]、1.03%[95%CI、0.91%-1.15%];調整オッズ比[OR]、1.67[95%CI、1.57-1.76])。心不全のない患者と比較して、心不全の症状のある患者(n=5906)のほうがリスクが高かった(597人が死亡[10.11%]、調整絶対 RD、2.37%[95%CI、2.06%-2.57%];調整OR、2.37 [95%CI 2.14?2.63])。無症候性心不全患者(n=42091)(死亡 2038人[租リスク、4.84%]、調整絶対 RD 0.74%[95%CI、0.63%-0.87%]、調整 OR、1.53[95%CI、1.44-1.63])は、左室収縮機能が維持されたサブセット(1144 人の死亡[4.42%];調整絶対 RD、0.66%[95%CI、0.54%-0.79%]、調整 OR、1.46[95%CI、1.35-1.57])を含めて、高リスクであった。

・待機的非心臓手術を受ける患者では、心不全は症状の有無にかかわらず術後 90 日死亡率と有意に関連していた。これらのデータは、非心臓手術を受ける心不全患者との術前の話し合いに役立つ。

[!]:心不全があれば症状の有無にかかわらずリスクは上がる。症状があれば、さらに死亡率は増加する。

【出典】
Association of Left Ventricular Ejection Fraction and Symptoms With Mortality After Elective Noncardiac Surgery Among Patients With Heart Failure
JAMA. 2019;321(6):572-579. doi:10.1001/jama.2019.0156

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