術前高血圧と術後合併症に関連することが知られている術中血行動態変化との関連性

高血圧2.png・高血圧は術後の心血管疾患と一貫しては関連しておらず、したがって主要な周術期危険因子とは考えられていない。しかし、高血圧は、術中低血圧や頻脈など、周術期の罹患率や死亡率と関連することが知られている周術期血行動態変化を引き起こしやすくする可能性がある。本研究の目的は、術前高血圧が周術期の有害な転帰と関連することが知られている血行動態変化と独立して関連しているかどうかを明らかにすることであった。

・著者らは、非心臓、非産科の待機的手術を受ける全成人入院患者を対象とした 5 日間の多施設共同前向き観察コホート研究を実施した。

343 名の患者を募集し、そのうち 164 名(47.8%)が高血圧であった。術中の平均動脈圧が 55mmHg 未満であった患者は 59 人(18.2%)であり、そのうち 25 人(42.4%)が高血圧症であった。術中の頻脈(心拍数 100 回/分以上)は 126 例(38.9%)に認められ、うち 61 例(48.4%)が高血圧症であった。多変量ロジスティック回帰では、ASA身体状態、機能状態、大手術、手術時間、輸血で調整した場合、高血圧のステージと臨床的に重大な低血圧または頻脈のいずれとも独立した関連は示さなかった。また、術前高血圧と主要な罹患率および死亡率と関連することが知られている周術期血行動態変化との間には関連は認められなかった。

・したがって、これらのデータは、グレートブリテンおよびアイルランド麻酔科医協会(AAGBI)と英国高血圧学会の共同ガイドラインが推奨する、患者の血圧が 180/110mmHg 未満であれば待機的手術を行うことを支持するものである。

術前の高血圧は、 180/110mmHg 未満であれば、必ずしも術後の合併症率や死亡率とは関連していない。それ以上ある場合は、手術を延期して術前コントロールを行うべきである。

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