短期留置フォーリーカテーテルは合併症のない初回 THA および TKA における術後尿閉リスクを減少させない:無作為化比較対照試験

導尿カテーテル.png・本無作為化比較試験の目的は、股関節全置換術(THA)と膝関節全置換術(TKA)を受ける患者において、短期間のフォーリーカテーテル(手術室で挿入し整形外科病棟に到着次第抜去)が術後尿閉(POUR)のリスクを減らすかどうかを判断することであった。

・入院して脊椎麻酔で初回 TKA(n=228)または THA(n=160)を受ける患者 388 人を、短期間のフォーリーカテーテルを使用する群(n=194)と使用しない群(n=194)に無作為に割り付けた。男性患者 143 名、女性患者 245 名であった。主要転帰は POUR とし、膀胱スキャンで 450 mL 以上の貯留が認められ、2 回以上のカテーテル挿入か、または尿道カテーテル留置を要する場合と定義した。副次評価項目は、3 週間以内の尿路感染症(UTI)および 1 回以上のカテーテル挿入の必要性であった。検出力分析の結果、検出力 80%、アルファ値 0.05 で、POUR 率における臨床的に重要な最小差 7% を検出するには、1 群あたり 194 人の患者が必要であると判定された。治療意図解析および実治療解析が行われた(2 名の患者は非割付の治療を受けた)。治療成績は単変量解析および多変量解析により群間比較を行い、α値<0.05 とした。

・9 名の患者が POUR を発症した:短期フォーリー群 4 名、対照群 5 名(2.1% vs 2.6%;p=1.00)。POUR を発症した患者のうち、8 人が男性、1 人が女性であった(88.9% vs 11.1%;p=0.002)。24 人の患者が 1 回以上の一次的カテーテル挿入治療を必要とした:フォーリー群 10 人、対照群 14 人(5.2% vs 7.2%、p=0.40)。4 人の患者が尿路感染症を発症した。治療意図解析ではフォーリー群 3 例、対照群 1 例(1.5% vs 0.5%;p=0.62)、実治療解析ではフォーリー群 4 例、対照群ではなし(2.1% vs 0.0%;p=0.12)であった。

手術室で挿入され、整形外科病棟に到着した時点で抜去される短期間のフォーリーカテーテルの使用は、POUR の発生率を低下させない。

導尿カテーテル留置に伴う副作用としては、術後の尿閉と尿路感染だろうから、尿閉の発生率が低下しないのなら、尿路感染症を増やすだけの処置になってしまう可能性がある。

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