重度腎障害患者における筋弛緩の回復に対するスガマデクスとネオスチグミンの比較:無作為二重盲検試験

・大規模な郡立病院において、前向き無作為化盲検比較試験を実施した。合計 49 例の患者が登録された。組み入れ基準は、年齢 18 歳以上、ASA-PS III および IV、クレアチニンクリアランス<30mL/分、手術予定時間 2 時間以上の全身麻酔を受け、筋弛緩が必要な患者であった。気管挿管を容易にするため、麻酔導入にシスアトラクリウム 0.2mg/kg またはロクロニウム 0.6mg/kg を投与した。手術中は中等度の筋弛緩を維持し、筋弛緩の回復のために 2mg/kg のスガマデクスまたは 50μg/kg のネオスチグミンと 10μg/kg のグリコピロレートを投与した。筋弛緩モニタリングは筋電図(TwitchView)を用いて行い、TOFR は拮抗薬投与後 1 分ごとに記録した。筋弛緩拮抗薬の投与から TOFR≧90% に達するまでの時間を主要転帰として記録した。
・TOFR が 90% 以上に回復するまでの平均時間は、ネオスチグミンが 14.8(±6.1)分であったのに比べ、スガマデクスは 3.5(±1.6)分と有意に早かった(P<0.0001;平均差、11.3 分;95% 信頼区間[CI]、9.0-13.5 分)。いずれの群においても重大な有害事象はみられなかった。
・重度の腎機能障害を有する患者において、ロクロニウムによる筋弛緩後にスガマデクスで筋弛緩を回復させると、シスアトラクリウムをネオスチグミンで拮抗した場合と比較して有意に早く神経筋機能を回復させることができ、主要な有害事象は認められなかった。
ひこ
一般的な健康人では、スガマデクスは、ネオスチグミンに比べて、その拮抗速度は約 8 倍とされている。本研究では、ロクロニウムをスガマデクスで、シスアトラクリウムをネオスチグミンで拮抗しているのではあるが、重症腎機能障害患者では、約 4 倍早いということになるのかな。腎不全患者では、スガマデクスのほうが拮抗速度も速いし、信頼性も高いし安全だ。
【出典】
Sugammadex Versus Neostigmine for Reversal of Neuromuscular Blockade in Patients With Severe Renal Impairment: A Randomized, Double-Blinded Study
Anesth Analg. 2024 Jan 8.
Sugammadex Versus Neostigmine for Reversal of Neuromuscular Blockade in Patients With Severe Renal Impairment: A Randomized, Double-Blinded Study
Anesth Analg. 2024 Jan 8.
2.スガマデクスはネオスチグミンに比べてベクロニウム誘発性筋弛緩を速やかに拮抗する:多施設無作為対照試験
3.韓国人患者での中等度のロクロニウム誘発性筋弛緩のスガマデクス vs ネオスチグミンによる拮抗
4.術後退院促進におけるスガマデクスの役割:メタアナリシス
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