整形外科医が管理する脊椎麻酔下での高齢者の股関節骨折修復手術における術中低血圧の背景因子:後ろ向き症例対照研究
・大腿骨転子部骨折手術には脊椎麻酔が用いられるが、低血圧を誘発することが多く、その原因因子は不明である。著者らは、大腿骨転子部骨折の手術で脊椎麻酔を受けた高齢患者において、術中に昇圧剤薬を使用した背景因子を検討した。
・2020 年 4 月から 2023 年 7 月までの間に当院で整形外科的に管理された脊椎麻酔下でショートネイル固定術を受けた年齢 75 歳以上の大腿骨転子部骨折患者 203 例(平均年齢 87.9歳)を後ろ向きに分析した。患者を A 群(術中昇圧剤薬あり)と B 群(昇圧剤薬なし)の 2 群に分けた。以下のデータを比較した:年齢、性別、身長、体重、肥満度、降圧薬、執刀医としての経験年数、ブピバカイン投与量、穿刺値、麻酔時間、手術時間、手術当日のヘモグロビン値と血中尿素窒素/クレアチニン比、脳性ナトリウム利尿ペプチド値、左室駆出率、搬送当日に手術した患者の割合。
・ブピバカインの平均投与量は 11.7mg であった。単変量解析では、A 群はやや若く(87.0 歳 vs 88.3 歳)、血中尿素窒素/クレアチニン比が高く(27.1 vs 24.5)、β遮断薬(14.1% vs 5.8%)および利尿薬の投与頻度が高く(21.9% vs 11.6%)、穿刺値が高かった。ロジスティック回帰分析の結果、A 群では若年(p=0.02)と利尿薬(p=0.001)が独立危険因子であることが同定された。穿刺値が高いほど、A 群では昇圧剤の使用頻度が高かった(L2/3 で 57%、L3/4 で 33%、L4/5で15%、L5/S で 0%)。
・脊椎麻酔による低血圧は、体液量不足または広範な交感神経遮断に起因するものであり、高い穿刺値を避け、利尿薬を使用している患者では術前の水分補給を増やすことで予防できる可能性がある。現在、麻酔薬の投与量に関するコンセンサスは得られていない。
・2020 年 4 月から 2023 年 7 月までの間に当院で整形外科的に管理された脊椎麻酔下でショートネイル固定術を受けた年齢 75 歳以上の大腿骨転子部骨折患者 203 例(平均年齢 87.9歳)を後ろ向きに分析した。患者を A 群(術中昇圧剤薬あり)と B 群(昇圧剤薬なし)の 2 群に分けた。以下のデータを比較した:年齢、性別、身長、体重、肥満度、降圧薬、執刀医としての経験年数、ブピバカイン投与量、穿刺値、麻酔時間、手術時間、手術当日のヘモグロビン値と血中尿素窒素/クレアチニン比、脳性ナトリウム利尿ペプチド値、左室駆出率、搬送当日に手術した患者の割合。
・ブピバカインの平均投与量は 11.7mg であった。単変量解析では、A 群はやや若く(87.0 歳 vs 88.3 歳)、血中尿素窒素/クレアチニン比が高く(27.1 vs 24.5)、β遮断薬(14.1% vs 5.8%)および利尿薬の投与頻度が高く(21.9% vs 11.6%)、穿刺値が高かった。ロジスティック回帰分析の結果、A 群では若年(p=0.02)と利尿薬(p=0.001)が独立危険因子であることが同定された。穿刺値が高いほど、A 群では昇圧剤の使用頻度が高かった(L2/3 で 57%、L3/4 で 33%、L4/5で15%、L5/S で 0%)。
・脊椎麻酔による低血圧は、体液量不足または広範な交感神経遮断に起因するものであり、高い穿刺値を避け、利尿薬を使用している患者では術前の水分補給を増やすことで予防できる可能性がある。現在、麻酔薬の投与量に関するコンセンサスは得られていない。
ひこ
高齢者下肢手術では、L4/5 以下で穿刺し、等比重ブピバカイン液を 2.2 ml 以下程度、針の側孔を患測に向けて使用するのが、低血圧を招きにくくすると考えている。整形外科医の研究だが、麻酔科医にも見習って欲しいものだ。
【出典】
Background factors for intra-operative hypotension during hip fracture repair surgery in the elderly under spinal anesthesia managed by orthopedic surgeons: A retrospective case-control study
Injury. 2024 Apr 4;55(6):111549.
Background factors for intra-operative hypotension during hip fracture repair surgery in the elderly under spinal anesthesia managed by orthopedic surgeons: A retrospective case-control study
Injury. 2024 Apr 4;55(6):111549.
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