低侵襲ヘルニア手術における術後尿閉予防へのスガマデクスの使用

尿閉3.png・術後尿閉(POUR)はヘルニア手術の合併症として知られている。低侵襲鼡径ヘルニア修復術(IHR)は一般的に全身麻酔下で行われ、筋弛緩(NMB)が行われるが、一般的には抗コリン作用薬とペアになった抗コリンエステラーゼ阻害薬で回復される。スガマデクスは、抗コリン薬と併用する必要のないユニークな NMB 回復薬である。著者らは、これらの手技後の POUR 発生率の減少におけるスガマデクスの役割を探求しようとした。

・2016 年 2 月から 2019 年 10 月の間に単施設で後ろ向きにデータを収集した。低侵襲 IHR を受け、NMB 拮抗のためにスガマデクスまたはネオスチグミン/グリコピロレートの投与を受けた患者を同定し、調査した。主要評価項目は、膀胱カテーテル留置を必要とする POUR であった。副次評価項目は術後および 30 日間の再入院であった。

274 例の患者が本研究に組み入れられた(143 例がネオスチグミンとグリコピロレート、131 例がスガマデクスを投与された)。スガマデクス投与群はネオスチグミン/グリコピロレート投与群より平均年齢が 5 歳高く(63.2 vs 58.2、p=0.003)、静脈内輸液(IVF)中央値は少なかった(900 ml vs 1000 ml、p=0.015)。スガマデクス群とネオスチグミン/グリコピロレート群では、POUR の発生率に有意差がみられた(0.0% vs 8.4%、p≦0.001)。この差は年齢と IVF でコントロールした後も有意であった。ネオスチグミン/グリコピロレートを投与された患者の POUR のオッズは、スガマデクスを投与された患者のオッズより 25 倍高かった。

・本研究の結果は、低侵襲 IHR 症例における POUR に対するスガマデクスの保護的役割を反映している

昔ながらの抗コリンエステラーゼ剤で筋弛緩を拮抗するためには抗コリン剤を併用する必要があり、スガマデクスに比べて、術後尿閉の頻度が 25 倍も高くなるようだ。

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