直接作用型抗凝固薬(DOAC)の使用は股関節骨折患者の手術を遅らせ、死亡率の上昇と関連する

DOAC.png・直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)による治療は股関節骨折患者の間で増加しており、それに伴い脊椎麻酔(SA)に関する安全性の懸念がある。本研究の目的は、DOAC の使用が術前の待機時間の増加、死亡率の増加、その他の有害事象と関連しているかどうかを調査することである。

・2015 年から 2021 年にかけて単一の病院で手術治療された股関節骨折症例のレジストリデータを解析した。DOAC の状態と麻酔の選択を曝露とし、待ち時間、入院期間、輸血、死亡率を転帰として多変量回帰分析を行った。

・2885 例が対象となり、467 例(16%)が DOAC を使用していた。DOAC 使用者は非 DOAC 症例に比べ、高齢(86.3 歳 vs 82.2 歳、p<0.001)、チャールソン併存疾患指数が高く(2.1 vs 1.5、p<0.001)、手術までの時間中央値が長かった(36 時間 vs 17 時間、p<0.001)。全身麻酔(GA)は DOAC 患者の 19.3% で使用され、非 DOAC 患者では 3.0% であった。DOAC 患者では 1 ヵ月死亡(調整オッズ比(AOR)1.6(1.1-2.3))と 1 年死亡(AOR 1.4(1.1-1.8))のリスクが高かった。輸血のリスクに差はなかった。GA 下で手術された DOAC 患者は 1 年死亡のリスクが低かったが(AOR 0.5(0.3-0.9))、1 ヵ月死亡率は SA 下で手術された DOAC 患者と同様であった。

DOAC 使用者は手術までの待ち時間が長く、SA の安全性への懸念から手術が延期されたことを示している。DOAC 患者に対してより早期の手術が可能となるように臨床診療を変更すべきである。

DOAC 患者は、手術までの待機時間が長くなり、脊椎麻酔を回避する傾向にあるようだ。


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