産科的脊髄幹麻酔後の全脊麻:記述レビュー

脊椎麻酔3D.png・全脊麻(TSA)は、高度の脊髄幹遮断によって引き起こされる重大インシデントである。産科麻酔における全ての脊髄幹手技の合併症として認識されている。その発生率と転帰は評価されていない。TSA が現代の診療において問題であり続け、早期に発見し迅速に治療しなければ、重大な罹患率と死亡率を引き起こす可能性があるという説得力のあるエビデンスがある。文献検索に基づく本総説の目的は、 TSA の疫学を明らかにし、その病態生理を要約し、危険因子と有効な治療法を明らかにすることである。

・PubMed、Web of Science、Google Scholar の各データベースを用いて、指定した検索語を用いて発表された文献を検索した。各症例について、ブロックの種類、手技の難易度、局所麻酔薬の投与量、イベント前後の誤嚥の有無、母体の転帰、アプガースコア、症状の発現、心肺および神経学的症状、使用した心肺補助、集中治療室への入院、心停止イベント、機械的人工呼吸の期間を抽出した。

合計 605 症例が同定され、そのうち 51 症例が解析に十分な詳細情報を得た。TSA は全ての脊髄幹手技後に報告されているが、最近の報告では硬膜外麻酔後の脊髄麻酔が特に懸念されていた。呼吸困難は普遍的であったが、無呼吸はそうではなかった。無呼吸の発現は様々で、1〜180 分であった。低血圧は常にあるわけではなく、約半数の症例にみられた。多くの死亡例や神経学的損傷例が報告されているが、その多くは、医療提供者が気道管理に熟練していなかったり、認識や介入が遅れたりしたために、医療資源の乏しい地域で発生したものである。最新の報告では、効果的な治療が迅速に行われた場合に良好な転帰が得られている。

・利用可能な文献から、TSA は依然として現役の臨床問題であり、迅速な認識と治療によって良好な転帰が得られることが確認された。そのためには、脊髄幹手技が行われる全ての臨床領域において、予期と準備が必要である。

硬膜外麻酔では局所麻酔薬の使用量が多いので全脊麻を起こしやすい。脊椎麻酔の場合は、通常 1 アンプル(4ml)では全脊麻は起こせない。

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