人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術後の当日退院失敗の原因と危険因子:メタ分析

退院.png・ここ数十年、手術後の早期当日退院(SDD)の傾向は劇的に高まっている。人工股関節全置換術(THA)後の SDD vs 入院延長に関する意思決定の指針となる適切なリスク層別化ツールを開発する努力は、ほとんど不完全なままである。本報告の目的は、THA および人工膝関節全置換術(TKA)を受けた患者において、SDD の失敗に関連する最も頻度の高い原因および危険因子を特定することである。

・PRISMA ガイドラインに従って 4 つの文献データベースを系統的に検索し、同日退院に成功した患者と失敗した患者の比較研究を行った。興味ある転帰は、同日退院の失敗に関連する原因とリスク因子であった。二項変数についてはオッズ比(OR)を、連続変数については平均差(MD)を算出した。メタ分析は RevMan ソフトウェアを用いて行った。異質性のエビデンスがある場合はランダム効果を用いた。

3492 人の患者を対象とした 8 件の研究が組み入れられた。SDD 失敗の最もよく見られる原因は起立性低血圧であり、次いで体調不良、嘔気/嘔吐、疼痛、尿閉であった。特に THA サブ群では、女性であることが失敗の危険因子であった(OR 0.77、95%CI 0.63-0.93)。ASA スコア IV(OR 0.33、95%CI 0.14-0.76)および III(OR 0.72、95%CI 0.52-0.99)は危険因子であり、2 種類以上のアレルギーを持つ患者や喫煙患者も同様であった。全身麻酔は失敗リスクを増加させたが(OR 0.58、95%CI 0.42-0.80)、脊椎麻酔は予防的であった(OR 1.62、95%CI 1.17-2.24)。直接前方アプローチと後方アプローチに有意差はみられなかった。

・結論として、起立性低血圧が SDD 失敗の主な原因であった。整形外科手術における SDD 失敗の危険因子としては、女性、ASA III および IV 分類、アレルギーが多い場合、喫煙患者、全身麻酔の使用などが同定された。これらの要因に対処することで、SDD の成績を向上させることができる。

日本では、10 年後でも、THA、TKA 後に同日退院できそうにはないな。


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