肥満症手術を受ける閉塞性睡眠時無呼吸患者の術後回復時間に対するスガマデクスとネオスチグミン拮抗投与の影響:二重盲検無作為比較試験

肥満症手術5.png・筋弛緩の残存は術後の重篤な合併症と関連しうる。スガマデクスは新しい筋弛緩薬(NMBD)拮抗薬であり、ロクロニウムを迅速かつ完全に拮抗させる。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)を有する病的肥満患者において、スガマデクスがネオスチグミンより優れているかどうかは不明である。著者らは、肥満症手術を受ける OSA を有する病的肥満患者において、スガマデクスがネオスチグミンと比較して手術室(OR)からの退院時間を短縮するかどうかを検討した。

・本試験は、2群並行による前向き二重盲検無作為化比較優越性試験であった。患者はスガマデクスまたはネオスチグミンによる NMBD の拮抗に 1:1 で無作為に割り付けられた。組み入れ基準は、全身麻酔下で待機的肥満症手術を受ける OSA のある病的肥満成人患者とした。除外基準は、ロクロニウム、スガマデクスまたはネオスチグミンに対するアレルギー、悪性高熱症、肝不全または腎不全、神経筋疾患、同意不能とした。主要転帰は、NMBD 拮抗薬の投与から手術室からの退院までの時間であった。副次評価項目は、NMBD 拮抗薬投与から患者が開眼して口頭命令に従うまでの時間、抜管までの時間などであった。治療群間の転帰の比較には Mann-Whitney 検定を用いた。

120 例を 60 例ずつ 2 群に無作為に割り付けた。全体の肥満指数(BMI)の中央値は 48.1kg/m2([四分位範囲、IQR])[43.0-53.5]であった。薬剤投与から OR からの退室までの時間は、スガマデクス群で 13.0 分[10.0-17.0]、ネオスチグミン群で 13.5 分[11.0-18.3]であった(P=0.27)。手術室への入室から退室までの時間についてブートストラップした 95% 信頼区間[CI]を用いた治療効果の推定値は -0.5[-2.5〜3]であった。術後合併症およびその他の副次評価項目に差はみられなかった。

病的肥満の OSA 患者において、ネオスチグミンの代わりにスガマデクスを投与しても、OR 退室までの時間に差は認められなかった。

ネオスチグミンで拮抗するにしても、術中のロクロニウムによる筋弛緩の管理さえ慎重に行えば、十分早期に筋弛緩からの回復は可能ということだな。要するにスガマデクスは贅沢品!

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