緊急挿管時の前酸素化のための非侵襲的人工呼吸

予備酸素.png・気管挿管を受ける重症成人において、低酸素血症は心停止や死亡のリスクを増加させる。気管挿管中の低酸素血症の発生率に対する非侵襲的換気による前酸素化の効果は、酸素マスクによる前酸素化と比較して不明である。

・米国のの救急部および集中治療室 24 施設で実施された多施設共同無作為化試験において、気管挿管を受ける重症成人(年齢 18 歳以上)を、非侵襲的換気による前酸素療法を受ける群と酸素マスクによる前酸素療法を受ける群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、麻酔導入から気管挿管後 2 分までの間に酸素飽和度が 85% 未満であったことで定義される、挿管中の低酸素血症であった。

・登録された 1301 人の患者のうち、低酸素血症は非侵襲的換気群では 624 人中 57 人(9.1%)に、酸素マスク群では 637 人中 118 人(18.5%)に発生した(差、-9.4% ポイント;95% 信頼区間[CI]、-13.2〜-5.6;P<0.001)。心停止は、非侵襲的換気群で 1 人(0.2%)、酸素マスク群で 7 人(1.1%)に発生した(差、-0.9% ポイント;95%CI、-1.8〜-0.1)。誤嚥は非侵襲的換気群で 6 例(0.9%)、酸素マスク群で 9 例(1.4%)に発生した(差、-0.4% ポイント;95%CI、-1.6〜0.7)。

気管挿管を受ける重症成人において、非侵襲的換気による前酸素化は、酸素マスクによる前酸素化よりも挿管中の低酸素血症の発生率が低かった。

重症成人の気管挿管前の前酸素化は、単なるフェイスマスクよりも非侵襲的換気(NPPV)が推奨される。低酸素血症や心停止が半分以下になる。陽圧で加圧することによって機能的残気量(酸素リザーバー)を増やすことができるのだろうな。

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