心臓弁手術を受ける患者に対する揮発性麻酔薬の使用と全静脈麻酔の比較:全国規模の集団ベース研究

心臓弁手術.png・多くの研究で、揮発性麻酔薬の使用は、その潜在的な心保護作用により、全静脈麻酔(TIVA)と比較して心臓手術後の転帰を改善する可能性が示唆されている。しかし、その結果は決定的なものではなく、心臓弁膜症手術を受けた患者を対象とした研究はほとんどない。

・この全国規模の集団ベースの研究は、健康保険請求データベースのデータに基づき、2010 年から 2019 年の間に韓国で心臓弁手術を受けた全成人患者を対象とした。患者は揮発性麻酔薬の使用に基づいて、揮発性麻酔薬群または TIVA 群に分けられた。安定化逆確率治療重み付け(IPTW)後、揮発性麻酔薬の使用と累積 1 年全死因死亡(主要評価項目)リスクおよび累積長期(1 年を超える)死亡リスクとの関連を Cox 回帰分析を用いて評価した。

・本研究に組み入れられた 30,755 例のうち、1 年死亡の全発生率は 8.5% であった。IPTW 安定化後、追跡期間中央値(四分位範囲)4.8 年(2.6-7.6年)において、累積 1 年死亡のリスクは TIVA 群と比較して揮発性麻酔薬群で差がなく(ハザード比、0.98;95% 信頼区間、0.90-1.07;P=0.602)、累積長期死亡のリスク(ハザード比、0.98;95% 信頼区間、0.93-1.04;P=0.579)でも差がなかった。

TIVA と比較して、揮発性麻酔薬の使用は心臓弁手術を受けた患者の術後死亡リスクの低下とは関連していなかった。この結果から、揮発性麻酔薬の使用は心臓弁手術後の死亡率に有意な影響を与えないことが示された。したがって、麻酔の種類の選択は、麻酔科医または施設の好みと経験に基づいて行うことが可能である。

心臓弁手術に際しての麻酔の種類は長期予後には関係ないようだ。


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