抗血小板療法を受ける心臓手術患者におけるトラネキサム酸の止血効果:系統的レビューとメタ分析

抗血小板療法.png・本研究の目的は、術前に抗血小板療法(APT)を施行した心臓手術患者におけるトラネキサム酸(TXA)の出血抑制効果を評価することである。

・2024 年 5 月まで、術前 APT を施行した心臓手術患者の術後出血に対する TXA 静注の影響を評価した無作為化比較試験(RCT)について、5 つの電子データベースを系統的に検索した。主要評価項目は術後出血量であった。副次評価項目は術後出血による再手術の発生率、術後の赤血球(RBC)、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板濃縮製剤の輸血必要量などであった。データの解析には、95% 信頼区間(CI)付き平均差(MD)または 95%CI 付きオッズ比(OR)が用いられた。出血および輸血必要量の減少に対する TXA 投与の影響の可能性を評価するために、サブ群解析とメタ回帰分析を行った。

3018 人の成人心臓手術患者(TXA 群、1510 人;対照群、1508 人)を対象とした合計 12 件の RCT が含まれた。今回の研究では、二重抗血小板療法(DAPT)、アスピリン、クロピドグレルの投与を受ける患者において、TXA が術後出血量を有意に減少させることが示された(MD= - 0.38 L, 95% CI: - 0.73 〜 - 0.03,P=0.03; MD= - 0.26 L, 95% CI: - 0.28 〜 - 0.24,P<0.00001; MD= - 0.37 L, 95% CI: - 0.63 〜 - 0.10,P=0.007)。TXA 群では対照群に比して出血による再手術が有意に少なかった。術後の赤血球と FFP の輸血量は TXA 群で対照群より有意に少なかった。サブ群解析によると、手術当日に DAPT を中止した試験では、術前 5〜7 日未満に DAPT を中止した患者よりも有意に術後出血のリスク[サブ群の差について(MD:-1.23L;95%CI:-1.42〜-1.04) vs (MD:-0.16L;95%CI:-0.27〜-0.05);P<0. 00001 ]および赤血球輸血のリスク[サブ群の差について(MD:-3.90 単位;95%CI:-4.75〜-3.05) vs.(MD:-1.03 単位;95%CI:-1.96〜-0.10);P<0.00001]が有意に増加した。

・このメタ分析により、TXA は術前 APT を施行した心臓手術患者の術後出血量および輸血必要量を有意に減少させることが示された。このような潜在的な臨床的利益は、アスピリンとクロピドグレルを手術日に近い時期に継続投与した患者の方が大きい可能性がある。

術前Iに抗血小板療法を行っている患者では、より積極的にトラネキサム酸を使用するべきだ。

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