腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた患者における深い筋弛緩を伴う低圧気腹と標準圧気腹で炎症マーカーの比較:無作為化比較試験

・本試験は単施設による前向き無作為化対照試験であった。対象は症候性胆石症で腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた全患者。参加者は A 群と B 群の 2 群に分けられた。A 群は深い筋弛緩(NMB)を行い、気腹圧を低く保つ低圧群(8〜10mmHg)、B 群は中等度 NMB を行う通常圧群(12〜14mmHg)であった。各群 40 名、計 80 名の便宜的サンプルサイズを選択した。CBC、LFT、RFT、血清IL-1、IL-6、IL-17、TNFα値などの検査項目は、術前と術後 24 時間後に測定し、適切な統計学的検定を用いて比較した。入院期間、術後疼痛スコア、転換率(低圧から標準圧への転換)、合併症などの他のパラメータも比較した。
・各群 40 人ずつ、計 80 人の参加者を分析した。ベースラインの特徴と検査項目は統計的に同様であった。両群間で炎症マーカーの差(術後-術前)を比較した。数値的には、ほとんどの炎症マーカー(TLC、ESR、CRP、IL-6、TNFα)が A 群に比べ B 群でわずかに上昇したが、統計的には有意ではなかった。アルブミンは A 群に比べ B 群で有意な低下(p< 0.001)を示した。術後疼痛も 6 時間後および 24 時間後において B 群に比べ A 群で有意に少なかった(p<0.001)。低圧から標準圧への転換はみられなかった。
・深い NMB を用いた低圧気腹下で行われた腹腔鏡下胆嚢摘出術は、中等度 NMB を用いた標準圧気腹下に比べ、炎症が少なく、術後疼痛も少ない可能性がある。これらの所見を支持するためには、よりサンプル数の多い今後の研究を計画する必要がある。
ひこ
高い気腹圧は、それだけで腹壁の過度の伸展や内蔵臓器の血流障害をきたす可能性がある。十分な筋弛緩と低圧気腹が患者には優しいのだろう。
【出典】
Comparison of inflammatory markers in low-pressure pneumoperitoneum with deep neuromuscular block versus standard pressure pneumoperitoneum among patients undergoing laparoscopic cholecystectomy for gallstone disease: a randomized control trial
Surg Endosc. 2024 Jul 8. doi: 10.1007/s00464-024-11026-z.
Comparison of inflammatory markers in low-pressure pneumoperitoneum with deep neuromuscular block versus standard pressure pneumoperitoneum among patients undergoing laparoscopic cholecystectomy for gallstone disease: a randomized control trial
Surg Endosc. 2024 Jul 8. doi: 10.1007/s00464-024-11026-z.
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