■ 臨床麻酔とクリティカルケアのMCQ問題 ■ 2024/08/05
【問題1】(呼吸器能) 次のうち正しいのはどれか。 | ア:喫煙者は非喫煙者に比べ術後の肺合併症が6倍多い。 イ:慢性肺疾患をもつ症例では、健常人と比較して術後の肺合併症が20倍多い。 ウ:12〜24時間の禁煙で一酸化炭素Hbとニコチンが減少し心血管系に有利である。 エ:3〜5日の禁煙で喀痰が減少する。 オ:上腹部手術では肺活量が75%減少する。 |
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[解説] 喫煙者は非喫煙者に比べ術後の肺合併症が6倍多い。慢性肺疾患をもつ症例では、健常人と比較して術後の肺合併症が20倍多い。12〜24時間の禁煙で一酸化炭素Hbとニコチンが減少し心血管系に有利である。1〜2週間の禁煙で喀痰が減少する。上腹部手術では肺活量が75%減少し、回復には数週間を要する。特に肋骨弓にかける創外鉤による牽引は術中ばかりでなく、痛みと横隔膜損傷のために術後の呼吸抑制の原因となる。
[正解] (ア)、(イ)、(ウ)、(オ) [出典] LiSA Vol3-No1-p43(1996)
【問題2】(低体温麻酔) 低体温麻酔について正しいのはどれか。 | ア:28度の低体温においては、生体の酸素消費量は約40%減少する。 イ:低体温では、吸入麻酔のMACは減少する。 ウ:低体温は、低酸素性肺血管攣縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction)を増強させる。 エ:低体温は、脳波所見には影響を及ぼすが、種々の誘発反応(脳幹聴性反応など)にはほとんど影響を及ぼさない。 オ:低体温では、血糖は一般に上昇する。 |
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[解説] 低体温で酸素消費量は約6%/度減少するので、28度では約40%減少する。低体温では吸入麻酔薬のMACは直線的に減少する。その度合は、脂質溶解度の変化の関数なので、麻酔薬により異なる。30〜28度前後では寒冷自体が麻酔作用を発揮する(Cold narcosis)。低体温はHPVを抑制し、その強さは30度で40度の約半分以下になる。脳波は次第に徐波化し、電位も低下していく。脳幹聴性反応も低体温で変化し、脳温19度では潜時が進行性に指数関数的に増加し、、25〜21度では完全に消失する。低体温では、インスリンが減少し、血糖が一般に増加する。
[正解] (ア)、(イ)、(オ) [出典] 第27回麻酔指導医認定筆記試験:A27
【問題3】(呼吸) 次のうち誤っているのはどれか。 | ア:中枢化学受容器は低酸素により刺激される。 イ:中枢化学受容器は高二酸化炭素により刺激される。 ウ:中枢化学受容器は[H+]の上昇により刺激される。 エ:末梢化学受容器の役割は頚動脈体>大動脈体である。 オ:末梢化学受容体の低酸素と高二酸化炭素による刺激は相乗効果を持つ。 |
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[解説] 中枢化学受容器は延髄の腹側表面にあるCO2や[H+]に特異的に感受性を示す部位である。末梢化学受容器には、頚動脈分岐部に位置する頚動脈体と大動脈弓および肺動脈表面に散在する大動脈体の2つが知られており、その役割は頚動脈体>大動脈体である。末梢化学受器は血中のO2低下、CO2上昇によって刺激され、さらに両刺激は相互に正の相乗効果を持つ。中枢化学受容器との最も大きな違いは低酸素によって刺激を受けることであり、酸素低下による呼吸中枢活動の抑制にも拮抗する。
[正解] (ア) [出典] 日本臨床麻酔学会誌 Vol19-No1-p25〜26
【問題4】(中枢神経) 頭蓋内圧亢進患者の麻酔について正しいのはどれか? | ア:頭蓋内圧亢進症とはくも膜下圧が10mmHg以上の状態が持続することである。 イ:脳組織は頭蓋の容積の75%を占める。 ウ:脳実質内光ファイバーモニター法は感染の危険が少ない。 エ:Cushing反射は延髄の虚血により起こる。 オ:プロポフォールは頭蓋内圧と脳酸素消費量の両方を低下させる。 |
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[解説] ア:×:頭蓋内圧亢進症とはくも膜下圧が15mmHg以上の状態が持続することである。正常の頭蓋内圧は10mmHgである。
イ:○:脳組織は頭蓋の容積の75%を占める。脳脊髄液は頭蓋の容積の10%を、血液は15%を占める。
ウ:○:脳実質内光ファイバーモニター法は、頭蓋骨に開けた小孔より光ファイバーの束を挿入し、そのチップの圧感知隔膜に反射する光の量の変化を圧力として感知する方法で、液体を充填して測定する他の方法とは異なり、感染の危険が少ない。
エ:○:高血圧と徐脈からなるCushing反射は延髄の虚血により起こる。一般的には頭蓋内圧が体血圧に近づいたときにみられる。
オ:○:プロポフォールとチオペンタールは頭蓋内圧と脳酸素消費量の両方を低下させるため好んで使用される。
[正解] 解説を参照 [出典] 麻酔科シークレット第2版 p321-326
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