Q:Aldrete スコアとは?

AldreteScore.pngAldrete スコアが発表されたオリジナルの論文は、J.A. Aldrete と D. Kroulik によって 1970 年に発表されました。この論文は、術後回復室での患者の回復状態を評価するための基準を提案しています。論文のタイトルは「A Postanesthetic Recovery Score」で、Anesthesia & Analgesia 誌に掲載されました。
Aldrete JA, Kroulik D. A postanesthetic recovery score. Anesth Analg. 1970 Nov-Dec;49(6):924-34.

私が、研修医のころは、この原著論文のタイトルに起因してのことと思われますが、一般には「リカバリー・スコア」と呼称していました。

この麻酔後の患者の回復状態を評価するスコアリングシステムが発表される以前に、新生児の健康状態を迅速に評価するための APGAR スコアが、1952 年にアメリカの医学者ヴァージニア・アプガーによって導入され、広く使用されていました。

Aldrete らは、この APGAR スコアにヒントを得て、以下の 5 つの項目をそれぞれ 1~2 点で評価する方法を考案しました。
Aldrete スコアリングシステム
動作命令で四肢を自発的に動かすことができる 2 
命令で二肢を自発的に動かすことができる 1 
動かすことができない 0 
呼吸深呼吸と咳を自由にできる 2 
呼吸困難または制限された呼吸 1 
無呼吸 0 
循環
(血圧)
麻酔前値との差<20% 2 
麻酔前値との差=20%~50% 1 
麻酔前値との差>50%  0 
意識完全に覚醒 2 
呼びかけで覚醒する 1 
反応なし 0 
ピンク 2 
ピンク色でもなくチアノーゼでもない 1 
チアノーゼ 0 

各項目は 0~ 2 点で評価され、合計スコアが 10 点満点となります。Aldrete スコアでは、通常 9 点以上で帰室可能と判断されます。

その後、酸素飽和度モニターが一般に普及した後(1995 年)に、主観的な判断となる「皮膚色(COLOR)」の項目が、客観性のある「パルスオキシメータで測定した酸素飽和度」という項目に置き換えられて修正が加えられました。
JA Aldrete. The post-anesthesia recovery score revisited. J Clin Anesth. 1995 Feb;7(1):89-91.

これが、修正 Aldrete スコア(Modified Aldrete Score)というもので、現在でも一般に使用さています。
修正 Aldrete スコアリングシステム
動作命令で四肢を自発的に動かすことができる 2 
命令で二肢を自発的に動かすことができる 1 
動かすことができない 0 
呼吸深呼吸と咳を自由にできる 2 
呼吸困難または制限された呼吸 1 
無呼吸 0 
循環
(血圧)
麻酔前値との差<20% 2 
麻酔前値との差=20%~50% 1 
麻酔前値との差>50%  0 
意識完全に覚醒 2 
呼びかけで覚醒する 1 
反応なし 0 
酸素化室内空気吸入で酸素飽和度>92% 2 
酸素吸入で酸素飽和度>90% 1 
酸素吸入しても酸素飽和度<90% 0 


ちなみに、世界的には「ファーストトラック基準」として知られているスコアリング・システムが、日本では、誤って「修正 Aldrete スコア(Modified Aldrete Score)」として広まっています。

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