胸腔鏡下肺手術後の慢性疼痛発生率に対する硬膜外麻酔と鎮痛の効果:後ろ向きコホート研究

硬膜外鎮痛2.png・胸部手術後の慢性疼痛(CPSP)は、侵襲の少ないビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)後でもよくみられる。本研究では、胸部硬膜外麻酔(TEA)がCPSP発症に及ぼす影響について検討した。

・2020 年から 2022 年の間に当センターで VATS を受けた患者のデータを後ろ向きに解析した。登録患者を硬膜外ブロック(EPI)群と患者管理下静脈内鎮痛(PCIA)群に分けた。CPSP に関する情報収集には電話によるアンケートを用い、術後 3 ヵ月または 6 ヵ月の時点での数値評価尺度(VAS)スコア≧1と定義した。さらに、2 群における CPSP の危険因子を特定するために統計解析を行った。

・全体で 894 例の患者が 3 ヵ月後と 6 ヵ月後の追跡面接を完了し、PCIA 群では 325 例、EPI 群では 569 例であった。PCIA 群の 3 ヵ月後および 6 ヵ月後の CPSP 発症率はそれぞれ 16.9%(95%信頼区間[CI]:9.3-32.7%)および 13.5%(95%CI:8.7-33.4%)、EPI 群ではそれぞれ 10.3%(95%CI:8.1-30.5%)および 3.6%(95%CI:3.5-21.5%)であった。3 ヵ月後(P=0.0048)および 6 ヵ月後(P<0.005)の CPSP 発生率は両群で統計学的に有意であった。年齢とリンパ節郭清は CPSP と有意に関連していた。

PCIA と比較して、TEA は VATS 後の CPSP 発生率の低さと関連しており、VATS 患者の鎮痛レジメンの重要な一部と考えるべきである。

VATS であっても、術後慢性疼痛の面からは、胸部硬膜外を併用した方が良さそうだな。

この記事へのコメント