高齢者の大腿骨転子間骨折手術における自発呼吸併用麻酔の適応について

自発呼吸.png・本研究の目的は、高齢者の大腿骨転子間骨折手術における自発呼吸併用麻酔の実施可能性と安全性を検討することである。

・2020 年 1 月から 2023 年 1 月にかけて、大腿骨転子間骨折に対して近位大腿骨釘転位防止術(PFNA)を受けた高齢患者 141 例(男性 45 例、女性 96 例、平均年齢:72.5±6.8 歳、範囲:65〜87 歳)を、この単盲検前向き無作為化比較試験に組み入れた。患者は無作為に 3 群に分けられた。A 群(実験群)は自発呼吸を維持するラリンジアルマスク(LMA)による全身麻酔群、B 群(対照群 1)は人工呼吸を行う LMA による全身麻酔群、C 群(対照群 2)は人工呼吸を行う気管挿管麻酔群であった。3 群間の関連指標の差を比較した。

・平均麻酔発現時間(6.23±1.45 分 vs. 12.78±2.78 分 vs. 13.73±2.43 分)、術後意識回復時間(8.13±0.83 分 vs. 11.34±0.89 分 vs. 12.45±0.86 分)、術後完全覚醒時間(10.45±2.34 分 vs. 18.87±2.56 分 vs. 19.62±2.93 分)は A 群が B 群、C 群より有意に短かった(p<0.05)。鎮痛効果の持続時間は A 群の方が B 群および C 群よりも長かった(p<0.05)。麻酔後、Ramsay Sedation Scale と視覚アナログスケール(VAS)のスコアは、A 群が他群より有意に低かった(p<0.05)。Mini-Mental State Examination(MMS)の平均スコアは、A 群で B 群および C 群より有意に高かった(p<0.05)。血行動態パラメータでは、血圧、心拍数、心拍出量、心臓指数(CI)値は、A 群で他群より有意に高かった(p<0.05)。

・本研究の結果から、高齢者の大腿骨転子間骨折の手術において、自発呼吸を温存する複合麻酔は安全で実行可能であり、機械的人工呼吸群よりも麻酔回復が早いことが示された。

これは何十年も前から、経験的に分かっていることだが、自発呼吸が温存されている全身麻酔では、人工呼吸下の全身麻酔よりも覚醒が早い。

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