全身麻酔下の高齢患者における術前の認知機能の脆弱性と術後合併症との関連：前向きコホート研究

・ 認知機能虚弱（CF）は、身体的虚弱と認知機能障害の併存を特徴とし、不利な健康転帰と関連している。高齢者は、加齢に伴う脳の変化や併存疾患の存在などの要因により、特にCFに陥りやすい。本研究の目的は、高齢患者における術前 CF が術後合併症に及ぼす影響を検討することであった。

・本前向きコホート研究は、2023 年 5 月から 2023 年 11 月までに広州中医薬大学第二附属病院で整形外科手術と腹部手術（術後入院期間 3 日以上）を待機的に受けた年齢 60〜85 歳の患者 253 人を対象に実施した。CF の評価は、認知状態については Montreal Cognitive Assessment（MoCA）を、5 つの虚弱尺度については Fried 基準を用いて行った。参加者は 4 群に分けられた： A 群（虚弱でも認知障害でもない）、B 群（認知障害を伴わない虚弱）、C 群（虚弱を伴わない認知障害）、D 群（認知虚弱）である。主要評価項目は術後合併症で、副次評価項目は移動障害、入院期間の延長（PLOS）、再手術、90 日再入院などであった。

・参加者の年齢中央値（四分位範囲）は 69 歳（65〜73 歳）、うち男性は 40.3% であった。CF の有病率は 17.8% であった。術後合併症の発生率は、A 群 18.2%、B 群 50.0%、C 群 37.4%、D 群 75.6% であった。多変量解析の結果、対照群（認知障害や虚弱なし）と比較して、CF 患者は術後合併症のリスクが有意に高いことが明らかになった（OR, 12.86; 95%CI,4.23-39.08）。「認知障害を伴わない虚弱患者」はリスクが高く（OR、6.53；95%CI、2.04-20.9）、「虚弱を伴わない認知障害者」もリスクが高かった（OR、3.46；95%CI、1.57-7.64）。

・全身麻酔による整形外科手術および腹部手術を受ける高齢患者において、認知機能虚弱は術後有害転帰のリスク上昇と有意に関連している。このことは、臨床医がこれらの高齢者 CF に十分な注意を払うべきことを示している。

ひこ

鎮痛剤と鎮静剤の併用時に相乗効果が見られるように、身体的脆弱性と、認知的脆弱性の併存は、相乗的に術後合併症を増大させるようだ。

【出典】
Association of preoperative cognitive frailty with postoperative complications in older patients under general anesthesia: a prospective cohort study
BMC Geriatr. 2024 Oct 19;24(1):851.

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