■ 臨床麻酔とクリティカルケアのMCQ問題 ■ 2024/10/24

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【問題1】(中枢神経) 頭蓋内圧亢進患者の麻酔について正しいのはどれか?

ア:エトミデイトは、基剤のプロピレングリコールが脳障害部位に神経学的欠損を生じさせる可能性がある。

イ:高張食塩水の少量投与は頭蓋内圧の上昇を抑える。

ウ:揮発性麻酔薬投与下でもPaCO2に対する脳血流の反応は保たれている。

エ:患者の頭部を挙上することにより静脈のドレナージを促進することができる。

オ:正常の頭蓋内圧は15mmHgである。


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[解説] ア:○:エトミデイトは、基剤のプロピレングリコールが脳障害部位に神経学的欠損を生じさせる可能性があるため使用するべきではない。
イ:○:高張食塩水の少量投与は頭蓋内圧亢進患者には適している。実際にいくつかの救命センターでは、高張の生理食塩水を少量(4ml/kg)輸液して、頭蓋内圧の上昇を抑えている。
ウ:○:揮発性麻酔薬投与下でもPaCO2に対する脳血流の反応は保たれている。
エ:○:患者の頭部を挙上することにより静脈のドレナージを促進することができ、頭蓋内圧低下に働くため、好都合である。
オ:×:正常の頭蓋内圧は10mmHgである。頭蓋内圧亢進症とはくも膜下圧が15mmHg以上の状態が持続することである。



[正解] 解説を参照 [出典] 麻酔科シークレット第2版 p321-326



【問題2】(老人麻酔) 老人の加齢に関して正しいのはどれか。

ア:PaCO2は加齢とともに増加する。

イ:分時最大換気量は加齢とともに減少しない。

ウ:機能的残気量は加齢とともに増加する。

エ:PAO2は変わらないが、PaO2は減少する。

オ:closing capacity は機能的残気量よりも高くなる傾向がある。


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[解説] 肺胞換気量は綿密に調節されており、PaCO2は一生、安静時35〜44mmHgと一定にとどまる。分時最大換気量は加齢によって減少する。残気量および機能的残気量は、加齢とともに増加、肺活量、予備吸気量、予備呼気量は減少する。PAO2は変わらないが、PaO2は減少[PaO2=103-0.24×年齢]、AaDO2は増加する。closing capacity(=残気量+closing volume)は13〜19歳以降は加齢とともに増加し、立位では66歳、仰臥位では44歳でそれぞれ機能的残気量と等しくなり、それ以上の年齢では後者より大きくなる。これが加齢によるPaO2低下の主因である。


[正解] (ウ)、(エ)、(オ) [出典] 第26回麻酔指導医認定筆記試験:B13



【問題3】(静脈麻酔) レミフェンタニルについて正しいのはどれか?

ア:レミフェンタニルの代謝物にはほとんど活性が存在しない。

イ:レミフェンタニルの副作用で最も多いのは悪心・嘔吐である。

ウ:フェンタニルは、肝機能障害者で蓄積性及び作用が延長する可能性がある。

エ:レミフェンタニルの適応は全身麻酔の導入及び維持における鎮痛だけである。

オ:レミフェンタニルの麻酔導入時の基本投与速度は1.0μg/kg/分とされる。


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[解説] ア○:レミフェンタニルの主代謝物であるレミフェンタニル酸のμアゴニストとしての活性は未変化体の1/270〜1/4700である。
イ×:レミフェンタニル臨床使用上、最も高頻度に生じる副作用は低血圧(41.2%)である。次いで徐脈(22.1%)、悪心嘔気(17.6%)、悪寒(11.0%)、嘔吐(9.6%)、筋硬直(3.0%)、呼吸抑制(1.8%)となっている。
ウ○:フェンタニルは、肝機能障害者で蓄積性及び作用が延長する可能性がある。これに対し、レミフェンタニルは、血液中および組織内の非特異的エステラーゼにより代謝され、肝機能・腎機能に影響されない。
エ○:フェンタニルは全身麻酔以外にも、激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛や局所麻酔における鎮痛の補助にも適応があるが、レミフェンタニルの適応は全身麻酔の導入及び維持における鎮痛だけである。
オ×:レミフェンタニル適正使用ガイドによると、レミフェンタニルの麻酔導入時の基本投与速度は0.5μg/kg/分、維持時の基本投与速度は0.25μg/kg/分とされる。



[正解] 解説を参照 [出典] 今日から実践できるレミフェンタニル麻酔



【問題4】(循環生理) 脈圧について正しいのはどれか?

ア:動脈管離断により減少する。

イ:大動脈縮窄症の遠位では減少する。

ウ:洞性徐脈により減少する。

エ:循環血液量不足で増大する。

オ:足背動脈では橈骨動脈より大きい。


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[解説] 動脈管開存症の場合、拡張期には大動脈から肺動脈へのシャントのために、拡張期圧は下降し、脈圧は増大している。動脈管離断により肺動脈へのシャントが消失すると、拡張期圧が上昇し、脈圧は減少する。大動脈縮窄症の遠位では血流量が少なく、血管内容量も減少しているので脈圧は減少する。洞性徐脈では脈圧は増大する。循環血液量不足では1回拍出量の減少、末梢血管抵抗の増加、および血管内容量の減少により脈圧は減少する。動脈圧波は末梢に進むにつれて変形する。peaking現象により、心臓から遠ざかるにつれ収縮期圧は上昇し拡張期圧は下降するので、脈圧は増す。


[正解] (ア)、(イ)、(オ) [出典] 第35回麻酔指導医認定筆記試験:A25

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