非心胸部手術を受けた患者において麻酔中の吸入酸素濃度が高いと術後肺合併症のリスクが増加する:後ろ向きコホート研究

酸素5.png・術中の理想的な吸入酸素濃度は依然として議論のあるところである。著者らは、非心胸部手術を受けた患者における術中の吸入酸素濃度(FiO2)と術後肺合併症(PPC)の発生率との関連を調査することを目的とした。

・2020 年 4 月から 2022 年 1 月までに非心胸部手術を受けた高齢患者を対象とした後ろ向きコホート研究である。術中の FiO2 により、患者を低(≦60%)FiO2群と高(>60%)FiO2 群に分けた。主要評価項目は、術後 7 日以内の複合肺合併症(PPC)の発生率とした。傾向スコアマッチング(PSM)および逆確率治療重み付け(IPTW)を行い、2 群間のベースライン特性の差を調整した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、FiO2 と PPC のオッズ比(OR)を算出した。

・年齢中央値70歳(四分位範囲:68〜74 歳)の 3,515 人の患者のうち、492 人(14%)が術後 7 日以内に PPC をきたした。全ロジスティック回帰モデルにおいて、FiO2 の上昇は PPC のリスク上昇と関連していた。単変量解析では、FiO2>60% 群の OR は 1.252(95%CI、1.015-1.551、P=0.038)であった。多変量ロジスティック回帰モデルでは、FiO2>60% 群の OR は 1.259(モデル 2)、1.314(モデル 3)、1.32(モデル 4)であった。PSM または IPTW を用いて、2 群間でバランスのとれた共変量分布を作成した。FiO2 上昇と PPC リスク増加の相関は、PSM 解析(OR, 1.393; 95% CI, 1.077-1.804;P=0.012)および IPTW 解析(OR, 1.266; 95% CI, 1.086-1.476;P=0.003)でも統計的に有意であった。

高齢の非心胸部手術患者において、術中 FiO2 が高いこと(>60%)は、あらかじめ定義された危険因子とは無関係に、術後肺合併症の発生と関連していた。PPC に罹患しやすい手術患者では、術中高 FiO2 を慎重に適用すべきである。

低酸素症は良くないが、過酸素もまた良くない。

対訳テキスト:20241105-1.pdf

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