全身麻酔中の侵害受容を測定するための各種モニターの比較:無作為化比較試験のネットワーク・メタ分析

疼痛モニター3.png・ 鎮痛剤の過少投与や過剰投与を避けるために、全身麻酔中の侵害受容を定量化するために、異なる技術を用いた様々な侵害受容モニターが開発されてきた。先行するメタ分析では、標準治療プロトコールに対する侵害受容モニターの挙動が検討されているが、モニター間の比較という潜在的に貴重なデータは含まれていない。これらのデータを完全に把握し、これらのモニターの挙動を比較するために、系統的検索とネットワークメタ分析を行った。

・PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Library、EmCare の各データベースにおける系統的検索から得られたデータを用いて、ベイジアンネットワークメタ分析を行った。検索は、成人患者における全身麻酔中の侵害受容モニタリングの使用と標準治療との比較、または他の侵害受容デバイスとの比較に関する関連 RCT を検出することを目的とした。主要評価項目は術中のオピオイド消費量とし、モルヒネ当量(MEs)の標準化平均差(SMD)を算出した。副次評価項目は、術後のオピオイド消費量と悪心・嘔吐、抜管時間、術後疼痛スコア、退院準備までの時間などであった。バイアスのリスクは、無作為化試験のための改訂版 Cochrane Risk of Bias ツール(RoB 2.0)を用いて評価した。

・3412 人の患者を含み、5 種類の侵害受容モニターを研究した 38 件の RCT が解析に含まれた: 侵害受容値モニター(NOL)、Analgesia Nociception Index(ANI)、Surgical Plethysmography Index(SPI)、Pupillometry(瞳孔痛覚指数[PPI]または瞳孔拡張反射[PDR])、およびBeat-by-Beat cardiovascular depth of anaesthesia index(CARDEAN)である。瞳孔計測では、標準治療と比較して(SMD -2.44 ME; 95% 信頼区間[CrI]-4.35〜-0.52)、SPI と比較して(SMD -2.99 ME; 95% CrI -5.15〜-0.81)、術中のオピオイド消費量の有意な減少が示された。瞳孔測定以外のモニターに関しては、標準治療または他のモニターとの比較において、オピオイド消費量に有意差は検出されなかった。瞳孔計測は PACU からの退院準備時間の延長と関連していたが、NOL は抜管時間の短縮と関連していた。その他の副次評価項目に関連する差はみられなかった。

瞳孔計を除けば、術中のオピオイド消費量に有意な効果を示したモニターはなかった。副次評価項目から、これらのモニターを使用した場合の患者の臨床的利益は限られていることが示された。

各種の疼痛モニター(侵害受容モニター)が開発され臨床に導入されているが、未だ鎮静度モニターとしての BIS モニターのような標準モニターになりそうなものはないのか。

対訳テキスト:20241202-2.pdf

この記事へのコメント