ビデオ補助胸腔鏡肺葉切除術後の麻酔手技と術後肺合併症(PPC): 後ろ向き観察コホート研究

VATS8.png・胸部外科手術は術後肺合併症(PPC)の 8〜10% の発生率と関連している。低侵襲のビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)の導入は、疼痛と肺合併症の軽減を目的としたものである。しかし、PPC は依然として VATS 後の合併症のよく見られる原因である。

・米国外科学会手術の質改善プログラムのデータベースを用いて、2017 年 から 2021 年までの VATS 肺葉切除術症例のうち、全身麻酔(GA)を主麻酔法とした症例を検索した。症例は、GA 単独、GA+局所、GA+区域、GA+硬膜外麻酔の 4 群に層別化した。一般化線形回帰モデルを用いて、罹患リスク因子をコントロールしながら、PPC が麻酔手技によって異なるかどうかを検討した。研究の主要評価項目は、何らかの PPC(肺炎、再挿管、人工呼吸の延長)の発生であった。副次評価項目は入院期間(LOS)であった。

・合計 15,084 例の VATS 肺葉切除術が同定され、14,477 例が組み入れ基準を満たした。PPC 率は 3.5-5.2% であった。群間で PPC のオッズに統計学的有意差はなかった。GA 単独群と比較して、局所・区域群は LOS が有意に短かった(それぞれ 9.1%、5.5%、いずれも ps<0.001)のに対し、硬膜外群は LOS が有意に長かった(18%、p<0.001)。

・著者らの解析は、区域麻酔または局所麻酔の追加が VATS 肺葉切除術後の LOS 短縮と関連することを示唆している。しかし、これらの手技は PPC 発生率の低下とは関連していなかった。今後の無作為化比較試験により、疼痛を軽減し回復を促進する最良の麻酔手技が明らかになる可能性がある。

VATS では、硬膜外麻酔の併用が LOS を長くしてしまうのか!意外だな。

対訳テキスト:20241206-1.pdf

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