手術前 21 日以内に SARS-CoV-2 陽性と判定された有症状小児と無症状小児における周術期合併症の後ろ向きコホート研究

COVID-19_8.png・COVID-19 は小児の麻酔リスクを増加させるが、症状の有無や重症度による合併症差についての理解は限られている。著者らは、症状のある COVID-19 陽性小児、特に呼吸器下部の症状がある小児は、無症状の患者よりも周術期の合併症が高く、麻酔前6日以内に診断された全患者で合併症が高くなるという仮説を立てた。

・この単施設の後ろ向きコホート研究では、2020 年 3 月 1 日から 2022 年 3 月 1 日までに全身麻酔による手術を受けた年齢 18 歳未満の小児で、COVID-19+ と判定された患者の記録を検討した。麻酔 10 日前までに陽性と判定された 225 例を主要評価項目として解析し、麻酔 21 日前までに陽性と判定された 298 例を副次評価項目として解析した。人口統計、併存疾患、ワクチン接種、術前および周術期のケア、合併症、死亡率に関するデータが収集された。主要評価項目解析には単変量回帰を用い、副次評価項目解析には分散分析を用いた。

・主要転帰:有症状患者は無症状患者に対して、術後呼吸器合併症(OR:3.53、1.18-10.6、p=0.024)、術後薬物療法(OR:7.64、2.29-25.51、p=0.001)、術後酸素療法(OR:2.62、1.19-5.79、p=0.017)を必要とする可能性が高かった。上気道症状を有する患者は、下気道症状を有する患者に対して、術後に薬物療法(OR:0.1、0.01-0.89、p=0.039)および酸素療法(OR:0.08、0.01-0.45、p=0.004)を必要とする可能性が低かった。副次評価項目: 麻酔 6 日前までに COVID-19 陽性であった患者は、他群に対して PACU 在室期間が長く(p<0.001)、術後呼吸器合併症(p=0.001)、薬物使用(p=0.038)、酸素使用(p=0.002)が多かった。

手術 10 日以内に COVID-19 と診断された小児では、術前症状、特に下気道症状が周術期合併症のリスクを増加させた。COVID-19 と診断された小児において、手術が遅れる可能性について話し合う際には、医療者と家族が共有する意思決定プロセスにおいて、特に下気道の症状の存在を強く考慮すべきである。

コロナ陽性の小児の麻酔に際しては、下気道症状の有無が術後転帰に大きく関わると。

対訳テキスト:20241209-1.pdf

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