気管挿管時の血行動態反応を鈍らせるフェンタニル静注の有効量中央値と 95% 有効量に及ぼす年齢の影響:二重盲検上下逐次法試験

フェンタニル6.png・気管挿管時の血行動態反応のコントロールは不可欠である。本研究の目的は、気管挿管時の血行動態反応を抑制するフェンタニルの有効量中央値(ED50)および 95% 有効量(ED95)に対する年齢の影響を評価することである。

全身麻酔を受ける患者(n=86)を年齢によって無作為に層別化した(1〜4 群);フェンタニルを Dixon and Massey 法に従って各患者に投与し、2μg/kg から開始した。投与量は、血行動態反応の鈍化の失敗または成功に応じて、後続の患者に対してそれぞれ 0.5μg/kg 幅で増減された。成功とは、挿管後 1 分、3 分、5 分における心拍数と血圧のベースラインからの変化が 20% 未満であったことと定義した。ED50 と ED95 は R 統計ソフトを用いて解析した。

第 1 群(20〜35 歳)、第 2 群(36〜50 歳)、第 3 群(51〜65 歳)、第4 群(66〜80 歳)におけるフェンタニルの ED50 は、それぞれ 2μg/kg(90% 信頼区間、1.50〜2.50)、2.25μg/kg(2.00〜2.50)、1.89μg/kg(1.54〜2.21)、1.27μg/kg(0.72〜1.82)であった。第 1 群、第 2 群、第 3 群、第 4 群の ED95 はそれぞれ 2.45μg/kg(2.32-2.96)、2.79μg/kg(2.58-4.38)、2.44μg/kg(2.33-3.06)、2.70μg/kg(2.30-5.18)であった。第 2 群では統計学的に有意な咳嗽の発生がみられた。

65〜80 歳の患者ではフェンタニルの ED50 用量が最も少なかったが、36〜50 歳の患者では挿管中の血行動態反応を鈍らせるために ED50 用量および ED95 用量が最も多かった。

フェンタニルの必要量は、併用する鎮静剤の用量も関係するが、やはり、年齢に応じて、高齢者になればより少ない用量で済む。

対訳テキスト:20250107-3.pdf

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