抜管後の合併症を陽圧法と吸引法で比較:系統的レビュー

・本研究は、International Prospective Register of Systematic Reviews(CRD42021272068)に登録した。無作為化比較試験(RCT)または観察研究で、陽圧抜管法と吸引抜管法を比較したものを医学文献データベースから検索した。検索はデータベースの開始時から 2022 年 7 月 7 日まで行った。組み入れられた研究は、バイアスのリスクツールを用いて質を評価した。
・6 件の RCT および 1 件の非無作為化対照研究がこの系統的レビューに含まれ(被験者数 1,575 人)、陽圧および吸引手技がそれぞれ 762 人および 813 人の被験者に適用された。3 件の研究は手術室で、4 件の研究は ICU で実施された。5 件の研究は成人を対象として実施され、2 件の研究は小児または新生児を対象として実施された。1 件の RCT を除く全研究で、陽圧法は吸引法よりも酸素飽和度低下、気道閉塞、肺炎、誤嚥、無気肺、再挿管などの合併症のリスクが統計学的な差はないが低い傾向が示された。6 件の RCT のうち 3 件はバイアスのリスクが高いと判定され、1 件の非無作為化比較試験はバイアスのリスクが深刻であると判定された。
・陽圧法は吸引法よりも合併症のリスクが低い傾向があった。さらなる質の高い研究が必要である。
ひこ
通常の気管内吸引後でさえ、肺加圧操作をした方がよいとされている。抜管時に同時に吸引を掛けると、肺内は人工的無気肺を作成してしまうので、加圧抜管した方がカフ上分泌物を口腔内に押し出すことに加えて、肺を加圧して僅かでも無気肺を少なくできるだろう。
【出典】
Comparison of Postextubation Complications Between Positive-Pressure and Suctioning Techniques: A Systematic Review
Respir Care. 2023 Mar;68(3):429-436.
Comparison of Postextubation Complications Between Positive-Pressure and Suctioning Techniques: A Systematic Review
Respir Care. 2023 Mar;68(3):429-436.
対訳テキスト:20250307-2.pdf
この記事へのコメント
>本総説論文の著者です。
これはこれは、直々のコメントをありがとうございます。
>マニアックなテーマにもかかわらず取り上げていただき、大変光栄です。皆様の臨床に少しでもお役立ていただければ幸いです。
マニアックどころか、日常的に挿管抜管を繰り返している麻酔科医にとっては非常に大事なテーマだと思っています。
2019年のアルゼンチンのブエノスアイレスのICUでのサーベイでは、わずか 27/217 (12.5%) use positive pressure ということで、陽圧法を使用している割合が非常に少なかったという報告がありますね(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31141083/)。
コロナ後で、平圧法が標準になってきているかもしれませんが、日本では陽圧法をどれくらいの方が支持、あるいは認知しているのか興味あるところです。
日本の麻酔科医がどのぐらいの割合で抜管方法を選択しているのかは気になったので、昨年の日本麻酔科学会の抜管に関するポスター発表で聴衆全員に挙手で質問してみたところ (30人以上?)、正確な数字はわからず印象にすぎませんが、
<コロナ前>
・加圧抜管:8割以上
・吸引抜管:1〜2割弱
・平圧抜管 (何もしない):数名
<コロナ後>
Q「平圧抜管にしたか?」→ほぼ全員が挙手
というような状況でした。上気道に関するセッションのため聴衆にバイアスがかかっている可能性はあるものの、加圧抜管の知名度はアルゼンチンよりは高そうですね。
私はもうコロナは明けたと判断して加圧抜管で抜管していますが、今後の標準がどうなるかは気になるところです。
頂いた情報は読者の目に触れやすいように記事にさせてください。
>聴衆にバイアスがかかっている可能性はあるものの、加圧抜管の知名度はアルゼンチンよりは高そうですね。
日本では加圧抜管はかなり浸透していたのですね。
>私はもうコロナは明けたと判断して加圧抜管で抜管していますが、今後の標準がどうなるかは気になるところです。
個人的には、従来通り加圧抜管したり、カフを大気圧開放(シリンジで完全にしぼませるのではなく、カフ圧計で大気圧に戻して、おそらく60~70%くらいはエアが残っている状態)してから平圧抜管しています。