Q:正常なカプノグラム波形とは?

A:正常なカプノグラム波形は、呼吸サイクルにおける二酸化炭素(CO2)濃度の変化をグラフで示したものです。その形状は、ほぼ長方形で、以下の 4 つの主要なフェーズで構成されます。
正常なカプノグラム(相説明).png

フェーズ I(吸気ベースライン):
・吸気相を示し、通常、CO2 を含まない吸気ガスを表すため、波形はベースライン(ほぼゼロ)に留まります。

フェーズ II(呼気立ち上がり相):
・呼気が始まり、死腔(気道のうちガス交換に関与しない部分)からの CO2 を含まないガスが最初に排出されます。その後、肺胞からの CO2 を含むガスが混ざり始め、CO2 濃度が急速に上昇するため、波形が急峻に立ち上がります。

フェーズ III(呼気プラトー相または肺胞プラトー相):
・肺胞からの CO2 に富んだガスが主に排出される段階です。通常、このフェーズでは CO2 濃度はほぼ一定となり、平坦な波形を示します。このプラトーの最後の値が呼気終末 CO2濃度(ETCO2)と呼ばれ、正常値は通常 35~45 mmHg です。

フェーズ 0(またはフェーズ IV)(吸気下降相):
・次の吸気が始まり、気道内の CO2 濃度が急速に低下するため、波形は急峻にベースラインに戻ります。

正常なカプノグラム波形の重要な特徴:
・長方形に近い形状: 各フェーズが比較的明確に区別され、滑らかな移行を示します。
・明確な呼気プラトー: フェーズIIIが比較的平坦で、安定した ETCO2 を示します。
・ベースラインがゼロに近い: フェーズIが CO2 を含まない吸気ガスを反映しているためです。
・急峻な立ち上がりと下降: フェーズ II とフェーズ 0 は、それぞれ呼気の開始と吸気の開始における CO2 濃度の急激な変化を示します。
正常なカプノ.png

カプノグラム波形の形状や数値の変化は、換気、灌流、代謝などの異常を示す可能性があり、臨床的に非常に重要な情報を提供します。

気管挿管やラリンジアルマスク挿入直後に、正常なカプノグラム波形が確認できることが、「患者は確実に換気できている=絶え間なく酸素が供給されている」という安心感になる。

「漸減しないカプノグラム波形」は、食道挿管の見逃し回避に最も重要視される「ゴールドスタンダード」だ。聴診なんか当てにならない!

持続的呼気二酸化炭素:PUMA が発案した概念で、食道挿管を除外する基準を満たすのに十分な呼気二酸化炭素の検出。この基準は以下の通り:
持続的な呼気二酸化炭素の基準.png
Chrimes N, et al. Preventing unrecognised oesophageal intubation: a consensus guideline from the Project for Universal Management of Airways and international airway societies. Anaesthesia. 2022 Dec;77(12):1395-1415. から引用改変
POINT1. 振幅が呼気中に上昇し、吸気中に下降する。
2. 少なくとも7呼吸にわたって一貫した振幅または増加する振幅
3. ピーク振幅がベースラインより 1kPa(7.5mmHg、1%)以上高い。
4. 測定値が臨床的に適切である
「持続的な呼気二酸化炭素」が存在すると宣言するためには、以上の 4 つの基準をすべて満たす必要がある。

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