Q:レミフェンタニルの効果部位濃度は、投与速度から類推できるのか?
Minto(1997)薬物動態モデルを用いて推定された、体重 70kg、身長 170cm、40 歳男性患者における、様々な注入速度(μg/kg/分)での定常状態におけるレミフェンタニル血中濃度(ng/ml)(英国版のレミフェンタニルの添付文書より)
| レミフェンタニル注入速度 (μ/kg/分) | レミフェンタニル血中濃度 (ng/ml) |
| 0.05 | 1.3 |
| 0.10 | 2.6 |
| 0.25 | 6.3 |
| 0.40 | 10.4 |
| 0.50 | 12.6 |
| 1.0 | 25.2 |
| 2.0 | 50.5 |
この表を見ると、確かに「レミフェンタニル注入速度(μg/kg/分)」の数値に約 25 を掛けると、「レミフェンタニル血中濃度(ng/ml)」の数値に近似できることが分かります。
例を挙げると:
0.05 μg/kg/分×25=1.25 ng/ml (表の数値は 1.3 ng/ml)
0.10 μg/kg/分×25=2.5 ng/ml (表の数値は 2.6 ng/ml)
1.0 μg/kg/分×25=25 ng/ml (表の数値は 25.2 ng/ml)
このように、約 25 倍という関係が表のデータから裏付けられます。また、レミフェンタニルの場合、定常状態では効果部位濃度はほとんど血中濃度と同じ値になります。
しかし、この「25」という数値(変数 α)は、厳密には、「体重 70kg、身長 170cm、40 歳の男性患者」の場合という条件付きなのです。
■ 持続投与速度と効果部位濃度
身長、体重、年齢、性別が決定されれば, 持続投与速度(D)ら定常状態の効果部位濃度(C)が変数 α を用いて以下の式で推定できます。
C(ng/ml) = α × D(μg/kg/分)
この変数 α は、以下の表に示されるように、身長が同じでも体重や年齢が変われば、変数 α も大きく変動します。正確には薬物動態シミュレーションを行う必要があるのです。しかし、誰もが薬物動態シミュレータを利用できるわけではないでしょう。
そこで、ここではざっくりと、変数 α =25 ということで、例えば、体重 50 kg の患者さんに、麻酔からの覚醒時に、咳嗽を抑制するために、効果部位濃度が 1.5 ng/ml の状態で抜管したいと考えた時、具体的にシリンジポンプの投与速度はどれくらいに設定すればよいのかを考えてみましょう。
① 目標血中濃度(効果部位濃度)からの投与速度の算出:
目標とするレミフェンタニルの効果部位濃度が 1.5 ng/ml であり、仮定された関係式が「投与速度(μg/kg/分) ×25= 血中濃度(ng/ml)」である場合、
投与速度(μg/kg/分) =1.5 ng/ml÷25=0.06 μg/kg/分
② 患者さんの総投与速度の算出:
患者さんの体重が 50 kg なので、
0.06 μg/kg/分×50 kg=3 μg/分
③ 1時間あたりの総投与量(μg/時)の算出:
3 μg/分×60 分/時=180 μg/時
④ 薬液の濃度:
レミフェンタニル 2 mg を 20 ml に希釈しているため、薬液の濃度は
2 mg=2000 μg
濃度 =2000 μg÷20 ml=100 μg/ml
⑤ 時間あたりの投与速度(ml/時)の算出:
180 μg/時÷100 μg/ml=1.8 ml/時
したがって、体重が 50 kg の患者さんで効果部位濃度を 1.5 ng/ml とするのに必要な投与速度は 1.8 ml/時 となります。
同様に、体重が 30~90 kgの患者で、レミフェンタニルの効果部位濃度が 1.5ng/ml、あるいは、2.0ng/ml となるようにするには、レミフェンタニル 2mg を 20 mlに希釈したものを、時間当たり何 mL 投与すればよいかを同様に試算してみた一覧表を以下に示します。ただし、この表を参照する際には、患者の実体重ではなく、標準体重や除脂肪体重にて参照する必要があります。また、年齢効果も考慮して調節する必要があります。
| 標準体重 (kg) | 効果部位濃度 | |
| 1.5 ng/ml | 2.0ng/ml | |
| 30 | 1.08 | 1.44 |
| 35 | 1.26 | 1.68 |
| 40 | 1.44 | 1.92 |
| 45 | 1.62 | 2.16 |
| 50 | 1.80 | 2.40 |
| 55 | 1.98 | 2.64 |
| 60 | 2.16 | 2.88 |
| 65 | 2.34 | 3.12 |
| 70 | 2.52 | 3.36 |
| 75 | 2.70 | 3.60 |
| 80 | 2.88 | 3.84 |
| 85 | 3.06 | 4.08 |
| 90 | 3.24 | 4.32 |
通常の日本人の成人(体重 50~70 kg)を対象とした場合、抜管時にレミフェンタニルの効果部位濃度を 1.5~2 ng/ml にしたければ、シリンジポンプの投与速度を 2~3 ml/h にすればよいことになります。
レミフェンタニルの通常の維持投与量が 0.2 μg/kg/min であるとすれば、50~70kg の患者で、6~ 8.4 ml/h で投与していることになりますが、手術終盤には、抜管に向けて投与量を 1/3 程度に減量すればよいことになります。

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