【文献抄訳】乳児におけるロクロニウム単回投与の作用時間― セボフルラン vs プロポフォル麻酔の比較

こんにちは、麻酔科勤務医の Knight です。

イントロ

乳児の全身麻酔では、筋弛緩薬の効果や回復時間を予測することが難しい場面があります。特にセボフルランなどの吸入麻酔薬は、非脱分極性筋弛緩薬の作用を延長することが知られていますが、乳児におけるデータは十分ではありません。
今回紹介する論文は、ロクロニウム 0.6 mg/kg 単回投与後の作用時間を、セボフルラン維持 vs プロポフォル維持で比較した前向き無作為化試験 "Time Course of a Single, 0.6 mg/kg Dose of Rocuronium Neuromuscular Block During Sevoflurane or Propofol Anesthesia in Infants-A Prospective, Randomized Trial J Clin Med. 2025 Sep 13;14(18):6459."です。

方法と結果

ロクロニウムからの回復時間の比較.png
  • 対象:4〜12 か月の乳児 20例(頭蓋縫合早期癒合症手術)
  • 群分け:セボフルラン群(SEVO, n=10)/プロポフォル群(PROP, n=10)
  • 筋弛緩モニタリング:TetraGraph EMG による TOF 比測定
  • 投与:ロクロニウム 0.6 mg/kg を単回静注
    • 主な結果
      • 発現時間:両群で差なし(約1.5分)
      • 回復時間(TOF ratio > 0.9)  SEVO 群:平均 136 分
         PROP群:平均 61.5 分  → セボフルラン群で有意に延長
      • 各 TOF 応答(T2, T3, T4)の再出現も、セボフルラン群で遅延

        • 考察

          この研究は、乳児においてもセボフルランがロクロニウムの作用を大きく延長することを明確に示しました。
          • プロポフォルでは約1時間で回復するのに対し、セボフルランでは 2 時間以上かかる可能性がある
          • 乳児は呼吸予備能が小さいため、残存筋弛緩は重篤なリスクとなり得る
          • 定量的モニタリングの重要性と、リバース薬使用の検討が強調されます

            • まとめ(Take Home Message)

              • ロクロニウム 0.6 mg/kg の回復時間は、セボフルランで有意に延長(平均136分)
              • プロポフォルでは約1時間で回復
              • セボフルラン使用時は残存筋弛緩リスクに要注意
              • 乳児麻酔では、定量的筋弛緩モニタと十分な安全マージンが不可欠

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