食道挿管の除外:「持続呼気二酸化炭素」を採用し、「痕跡なし=間違った場所」を廃止すべき時
この論説は、従来広く用いられてきた「no trace = wrong place(=カプノグラフに CO₂ の波形がない=喉頭ではなく食道にチューブがある)」というフレーズを廃し、代わりに「sustained exhaled CO₂(持続的呼気 CO₂)」という概念を用いるべきだ、と主張するものです。
背景
「no trace = wrong place」というフレーズは 2018 年に導入され、主に心停止下(胸骨圧迫中など)において、カプノグラフが平ら(flat trace)ならば誤挿管(食道挿管)の可能性が高い、という注意喚起として用いられてきました。 しかしながら、このメッセージは問題を抱えていると著者らは指摘します ― “flat trace でなければ安全”という誤解や安心感を生み、「トレースがある = チューブは正しい位置」という誤った前提につながりかねない。実際、未認識の食道挿管による死亡例は、その後も各国で報告され続けています。新しい提案 ― 「sustained exhaled CO₂」
そこで、2022 年に国際的なエアウェイ専門家グループ(Project for Universal Management of Airways; PUMA)がまとめたコンセンサス・ガイドラインは、「sustained exhaled CO₂」を食道挿管を除外するための基準として定めました。具体的には、以下の4条件を満たす場合にのみ「適切な呼気 CO₂」と判断され、食道挿管を除外できるとしています。- 呼気時に CO₂ 濃度が上昇し、吸気時に低下する波形。
- 少なくとも 7 呼吸にわたって、波形の振幅が一定または増加傾向であること。
- 波形のピーク振幅が基線から >1 kPa(約 7.5 mmHg) を上回ること。
- 臨床状況に照らして妥当な CO₂ 波形であること。
もし直ちにチューブを抜くのがリスクが高い状況であれば、動画喉頭鏡による再挿管、気管支鏡、超音波、または食道検出器など、利用可能な妥当な技術で食道挿管を除外する手段をとるべきです。臨床所見(胸の動き、曇り、聴診など)のみで安全と判断するのは不十分と断言しています。
なぜこれが重要か
「sustained exhaled CO₂」への移行によって、従来の “no trace = wrong place” の限界を克服できる点が強調されます。波形が微弱あるいは異常、あるいは不連続であっても、それを “あるから安全” と誤認し致命的なミスにつながる可能性があるためです。平らな波形のみならず、質・持続性・振幅の明確な定義があることで、より安全性の高い「気管挿管確認」の標準となります。さらに、著者らはこの移行を支持する多くの専門団体(例えば英国内では Royal College of Anaesthetists (RCoA) や Difficult Airway Society、Intensive Care Society など)を挙げており、実質的に国際・国内での標準(デファクト・ガイドライン)になるべきだとしています。

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