【文献抄訳】硬膜穿刺後頭痛(PDPH)に対する大後頭神経ブロック vs 翼口蓋神経節ブロック:ランダム化比較試験の結果から

はじめに

大後頭神経ブロック.png麻酔科医にとって、脊椎麻酔後の硬膜穿刺後頭痛(PDPH)は避けては通れない合併症の一つです。頻度は 10〜40% にものぼり、患者さんの ADL を著しく低下させます。
従来、保存的治療が無効な場合のゴールドスタンダードは硬膜外血腫パッチ(EBP)でしたが、侵襲性や再穿刺のリスクが課題でした。近年、より低侵襲な選択肢として大後頭神経ブロック(GONB)翼口蓋神経節ブロック(SPGB)が注目されています。今回は、これら 2 つの手技の有効性を直接比較した最新のランダム化比較試験をご紹介します。

【出典】Efficacy of Greater Occipital Nerve Block versus Sphenopalatine Ganglion Block for the Treatment of Postdural Puncture Headache after Spinal Anesthesia: A Randomized Clinical Trial. Ann Afr Med. 2026 Feb 6.

論文の概要

本研究は、脊椎麻酔後にPDPHを発症した64名の患者を対象に行われたランダム化臨床試験です。
  • P (Patient): 脊椎麻酔後にPDPHを発症した患者 64名
  • I (Intervention): 両側大後頭神経ブロック(GONB)群(32名)
  • 0.5%ブピバカイン 2mL + デキサメタゾン 4mg を使用
  • C (Comparison): 両側翼口蓋神経節ブロック(SPGB)群(32 名)
  • 同組成の薬剤(経鼻投与)を使用
  • O (Outcome): 介入後(30 分〜1 週間)の頭痛強度(NRSスコア)、随伴症状、レスキュー鎮痛薬の必要性、患者満足度など

結果

  • 早期の除痛効果: 介入後 30 分、1 時間、2 時間の時点において、仰臥位・坐位ともに GONB 群の方が SPGB 群よりも有意に NRS スコアが低い結果となりました(P<0.05)。
  • 中長期的な効果: 介入から 12 時間以降では、両群間に有意差はなく、どちらの手技も同等の効果を示しました。
  • 安全性: 両群ともに重大な副作用は認められず、最終的に EBP を必要とした症例もありませんでした。

麻酔科医の視点

本研究の結果から、GONBはSPGBと比較して、より迅速に頭痛を軽減させる可能性があることが示唆されました。
臨床現場での使い分けを考えると、以下の点がポイントになります:
  1. 即効性のメリット: 患者さんが強い痛みを訴えている急性期において、GONB は非常に強力なツールになります。
  2. 手技の簡便性と侵襲性: SPGB は経鼻的に綿棒等で行えるため非常に低侵襲ですが、GONB も超音波ガイド下やランドマーク法で比較的容易に施行可能です。
  3. 機序の違い: SPGB は副交感神経抑制による脳血管収縮、GONB は C2-3 領域の感覚遮断と中枢性感作の抑制という異なるアプローチです。
どちらも EBP という大きなハードルを超える前に試すべき、極めて有用な「低侵襲インターベンション」であると言えます。特に、早期退院を希望する症例や、授乳等で早期離床が必要な産科症例において、GONB の即効性は大きな武器になるでしょう。

まとめ

  • GONB は SPGB よりも、PDPH に対する早期(数時間以内)の除痛効果に優れる。
  • 12時間以降の経過は両群ともに良好で、同等の有効性を持つ。
  • どちらの手技も安全かつ簡便であり、EBP を回避するための第一選択肢となり得る。
PDPH の管理において、私たちは「薬物療法で待つ」だけでなく、これらのブロックを積極的に提示していく時期に来ているのかもしれません。

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