【文献抄訳】フローチャートから3×3マトリックスへ:麻酔深度と血行動態の可視化
皆さん、こんにちは。本日の「麻酔科勤務医のお勉強日記」では、臨床現場での意思決定をよりスマートにするための新しい視点を提供してくれる文献をご紹介します。
【出典】Lambert DH, et al. From Flow Chart to 3 X 3 Matrix: Visualizing Anesthetic Depth and Hemodynamics as a Complement to Lee, Egan, and Johnson’s Framework. Korean J Anesthesiol. 2026 Feb 3.
麻酔管理において、私たちは常に「麻酔は深すぎないか?」「血圧は適切か?」という問いに向き合っています。今回紹介するのは、これらの要素を直感的に把握するための新しいフレームワークに関する論文です。
しかし、臨床のリアルタイムな現場では、複数の変数を瞬時に統合して判断する必要があります。本論文は、従来のフローチャート形式の思考プロセスを、より視覚的で直感的な「3×3マトリックス」へと進化させることを提案しています。
例えば、マトリックス上の「麻酔が浅い × 低血圧」という区画に患者がいる場合、通常なら麻酔を深くしたくなりますが、実際には出血や脱水が原因かもしれません。逆に「麻酔が深い × 高血圧」であれば、単なる降圧薬の使用ではなく、麻酔薬の減量が必要かもしれません。
日々の臨床で私たちが無意識に行っている思考プロセスを、このように 9 つのセルに整理して可視化することで、若手への指導や、術中トラブル発生時のデバッグ作業が非常にスムーズになると感じます。特に BIS モニターなどの脳波指標と、観血的血圧測定を併用している場合に、このマトリックスは強力な武器になるでしょう。
複雑な症例ほど、こうしたシンプルなフレームワークが助けになります。明日からの管理に、頭の中の「3×3マトリックス」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
【出典】Lambert DH, et al. From Flow Chart to 3 X 3 Matrix: Visualizing Anesthetic Depth and Hemodynamics as a Complement to Lee, Egan, and Johnson’s Framework. Korean J Anesthesiol. 2026 Feb 3.
麻酔管理において、私たちは常に「麻酔は深すぎないか?」「血圧は適切か?」という問いに向き合っています。今回紹介するのは、これらの要素を直感的に把握するための新しいフレームワークに関する論文です。
はじめに
麻酔管理の本質は、手術侵襲に対する生体反応を適切に抑制し、循環動態を安定させることにあります。Lee、Egan、および Johnson らが提唱したフレームワークは、麻酔薬の薬物動態・薬力学(PK/PD)を基盤とした論理的な管理を促進してきました。しかし、臨床のリアルタイムな現場では、複数の変数を瞬時に統合して判断する必要があります。本論文は、従来のフローチャート形式の思考プロセスを、より視覚的で直感的な「3×3マトリックス」へと進化させることを提案しています。
論文の概要
この文献は、特定の臨床試験(RCT)ではなく、管理モデルの提示を主眼としたレター(Letter to the Editor)です。- P(対象): 全身麻酔を受ける患者
- I(介入/提案): 麻酔深度(浅い・適切・深い)と血行動態(高血圧/頻脈・安定・低血圧/徐脈)を軸にした 3×3 マトリックスによる状態把握
- C(比較): 従来の直線的なフローチャート思考
- O(アウトカム): 臨床判断の迅速化と、不適切な管理(例:血圧が低いのに麻酔が浅い状態での更なる降圧など)の回避
麻酔科医の視点
このマトリックスの優れた点は、「血圧が低い=麻酔が深い」という単純な思い込みを排除できる点にあります。例えば、マトリックス上の「麻酔が浅い × 低血圧」という区画に患者がいる場合、通常なら麻酔を深くしたくなりますが、実際には出血や脱水が原因かもしれません。逆に「麻酔が深い × 高血圧」であれば、単なる降圧薬の使用ではなく、麻酔薬の減量が必要かもしれません。
日々の臨床で私たちが無意識に行っている思考プロセスを、このように 9 つのセルに整理して可視化することで、若手への指導や、術中トラブル発生時のデバッグ作業が非常にスムーズになると感じます。特に BIS モニターなどの脳波指標と、観血的血圧測定を併用している場合に、このマトリックスは強力な武器になるでしょう。
まとめ
- 麻酔深度と血行動態を2軸で捉える「3×3マトリックス」の提案。
- 従来のフローチャートよりも多角的な視点で患者状態を評価可能。
- 「なぜ今の血圧なのか?」という問いに対し、薬理学と生理学の両面から論理的にアプローチできる。

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