【文献抄訳】小児眼科手術における気管チューブとラリンジアルマスク(LMA)の覚醒時興奮の比較:傾向スコアマッチング解析
はじめに
小児の眼科手術において、麻酔覚醒時興奮(Emergence Agitation: EA)は頻度が高く、患者の安全を脅かす要因となり得ます。しかし、気道管理手技が覚醒時不穏の発生に与える影響を検討した大規模な研究はこれまで限られていました。本研究は、小児眼科手術において気管チューブとラリンジアルマスク(LMA)の間で覚醒時興奮の発生率を比較することを目的として実施されました。論文の概要
- 対象(Patient): 2014 年 1 月〜 2022 年 12 月に韓国・大邱カトリック大学医療センターで斜視または眼瞼内反症(逆さまつげ)の手術を受けた、3〜7 歳の小児患者 1029 名。
- 介入・比較(Intervention / Comparison): 気管チューブ群 vs ラリンジアルマスク(LMA)群(傾向スコアを用いて 1:1 でマッチングを実施)。また、マッチング前のコホートに対しても多変量ロジスティック回帰分析を実施。
- 結果(Outcome):
- 全体での覚醒時興奮(EA)の発生率は 52.8%(543 名)でした。
- 傾向スコアマッチング後のコホートにおいて、EA の発生率は気管チューブ群で有意に高い結果となりました [74%(123/166例) vs 16%(26/166 例)、相対リスク: 4.73、95%信頼区間: 3.31-6.88、P<0.001]。
- マッチング前のコホート解析では、ケタミン単独で麻酔導入を行った場合にのみ、LMA の使用と比較して気管チューブの使用が EA と有意に関連していました(オッズ比: 7.94、95%信頼区間: 3.38-18.63、P<0.001)。
- 結論: 小児眼科手術において、LMA の使用は気管チューブの使用と比較して覚醒時興奮の発生率の低下と関連しており、特にケタミンで麻酔導入を行った場合にその傾向が顕著です。
麻酔科医の視点
小児の吸入麻酔や特定の外科手技(特に眼科手術)の覚醒期における興奮は、術後の縫合不全や転落などのトラブルにつながるため、臨床現場でのマネジメントが極めて重要です。本研究は、気管チューブ留置が LMA と比較して覚醒時興奮のリスクを大幅に高めること(傾向スコアマッチング後で相対リスク 4.73)を明確に示しています。特に、麻酔導入にケタミン単独を使用するシチュエーションにおいては、気管チューブの使用が強い危険因子として浮かび上がっています。小児眼科手術における気道選択において、術後の覚醒クオリティを考慮する上で LMA を選択する科学的根拠を補強する有用なデータと言えます。

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